134発目 言葉が通じない話。


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独身の頃はもとより
結婚してからも子供ができるまでは
割と頻繁に海外旅行に行っていた。

なんとなく勢いで英語が話せるように
なってからはパッケージのツアーじゃなく
個人旅行を楽しむ余裕すら出来てきた。

今の会社に入ってすぐの頃、
そのような経験を活かして
社員旅行の企画を担当した。

私は渡航経験のある場所にしようと
画策した結果、行き先をラスベガスにした。
今から12年ほど前の話だ。

予算を抑えるためホテルは二人部屋にし、
ホテルの場所もストリップ(メイン通りのこと)
の一番端の方にあるフラミンゴにした。

なるべく楽しんでもらうため
部屋割りも仲良し同士にしたのだが
どうしてもひとりあぶれるオッサン
(仮に彼をマッさんとする。)がいたので
仕方なく私と同室にした。
ところがもうひとりあぶれたオッサン
(仮にこの人をウエノブーとする。)が出てきた。
しかし部屋割りは済んだあとなので
一人部屋を希望していた人に
『すみませんが我慢してください』と
頭を下げた。
『あの人、いびきがうるさいんだよ』
といい顔はしなかったが最終的には
了承してくれた。

ごたつく一幕はあったが無事にラスベガスに
着いてε-(´▽`) ホッと一息ついたとき
マッさんを訪ねてウエノブーがやって来た。

二人は何やら相談を始め、ガイドブックを
見ながらごちゃごちゃやっている。
チラチラ私の方を見ながら、でもなー
とか言っている。
私はため息をこらえながら
『どうしました?』と尋ねた。

ウエノブーが嬉しそうに
『いやぁ、山ちゃん。マックに行きたいんだ』
でも行き方がわからない、とほざく。
もし言葉が通じなかったらと思うと
不安でしょうがないんだと。

あなたがわからないのは
行き方じゃなくて生き方ですよ。
と言わないだけの礼儀はある。

じゃ一緒に行きましょうと
重い腰をあげる。
後ろからついてくるマッさんが
『何食べます?』とか言いながら
ウエノブーとキャイキャイしている。

時差ボケとオッサンの相手で疲労は頂点だ。

マックに着く。
ほら、自分たちで頼んでみろよ。
という内容のことを丁寧に言ってみる。
『よし、マッさん行ってみるか』

カウンターで女性スタッフが
にこやかに対応してくれる。
マッさんが『部長、お願いしますよ』と
ウエノブーを励ます。
『ダブルバーガー、プリーズ』
おお、言えたじゃない。
今度は店員が
『ハウメニー』と聞いてくる。

ウエノブーは通じなかったと思い込み
『ダブルダブル、ダブルバーガーね』と
笑顔でピースサインを両手で作る。
店員は首をかしげながらOKと言って
金額を請求してくる。

あれ?高いな。

その時、そう思ったのは私だけだったが
ウエノブーもマッさんも満足そうに
していたから、まあいいかと口出ししなかった。

やはりというか案の定というか、
アメリカのマックが出してくるダブルバーガーは
日本のそれとは違って巨大だった。

その巨大なダブルバーガーが4つ。
トレイにでーーんと乗せられて
出てきた。

二人は不思議そうな顔をして
テーブルにつき、その巨大なバーガーを
見下ろしている。

ダブルバーガーをダブルダブル。
両手でピースマークを作ったりするから
4つも出てくるんですよ。

このウエノブーは翌日もグランドキャニオンで
現地の小学生に『キャット、キャット』と
不慣れな英語で話しかけ
『ノオゥ、フェレット!』と
たしなめられていた。

使えない英語は使うべきではない。

尚、文中に出てくる人物はすべて架空の名称です。

two fat men!

join one’s hands in prayer.

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