130発目 こだわりのラーメン屋の話。


sid_vicious

フランクシナトラのヒットソングといえば、
そう『MY WAY』だ。
この曲は史上最も多くのミュージシャンに
カバーされた曲と言われている。

歌詞の内容は、自分の道を
信じて進んできた、ということだったと
記憶している。

その一節がこうだ。

” たしかに君が知っているように
自分がこなせる以上のものを
抱え込んだときもあった
しかし疑問に思ったときは
立ち止まり、引き返した
私は全てに堂々と立ち向かった
自分の信ずるままに ”

これは死に近い男が
自分を振り返り語っている歌である。

自分の道をこんなにも信じて
突き進めている人が、この日本に
いったいどれくらいいるだろう。

私はそうゆう人を一人だけ知っている。

福岡県の北東部にある北九州市。
ここは私の故郷だ。
小倉北区にJR南小倉駅があり、
そこから木町の交差点に向かう途中、
左手にその男が営むラーメン店がある。

飲食業としては致命的に
不衛生な店構えとその男の見た目。

でも味はどうかな?
『汚い店ほどうまい』という
根拠のない理由で私は
のれんをくぐった。

カウンターに座り、ラーメンを頼む。
汚い髭面のオヤジが、返事もせずに
背を向ける。
態度までもが悪い。
なんだ、この親父。

私はこの時、ちょっと注意してやろうか
と思っていたが、これが彼なりの
こだわりだろうと、ぐっと堪えた。

『はい、おまち』と
またしても愛想のない声で
カウンターの向こうから
ラーメンを寄越してくる。

あぁ、やっぱりか。
丼の中に指が入ってる。
とうとう堪えきれず
私は注意した。
『オヤジ!指が入っとるやんか!』
彼は至って冷静に、そして
またしても愛想のない声で
私にこう言った。

『大丈夫。熱くないから』

彼は我が道を行く人物だった。

どこかでシドヴィシャスがカバーした
MY WAY が流れていた。

ソシテアジハ、マズカッタ。

合掌

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