128発目 ヒロユキとミナの話2


ファイナルカウント
カラオケから2日後、ヒロユキから
二人が付き合いだしたことを聞いた。
両手放しで祝福する気にもなれなかったが
とりあえず、おめでとうと伝えた。

その日の夜、バイトのカウンターで
ヒロユキはカラオケのあとのことを
詳細に、実に詳細に話してくれた。
私はといえば興味がないのに
相槌だけは適当に打っていた。

そして驚いたことにそのさらに2日後。
ヒロユキはバイトをやめると言い出した。
もっと彼女と一緒にいたいんだと。
彼女のバイト先は中洲のスナックで
たまたまボーイを募集しているというのだ。
ママに話すと早速明日からおいで
と言われたからと、こちらのバイトを
あっさりやめた。
やっぱり水商売の女だったのか。

『サトルさん。お世話になりました。
新しい職場にも一度来てください。』
ヒロユキは何の悪意もなくそう言ったが
そんなカップルで働くスナックなんか
行きたくねえよ!とは言えなかった。

『そこのママ、オカマなんすよ
だから、どっちかというと
パパっすよ。』

ますます行く気をそがれる。

”ヨーロッパ、780万枚”

このキーワードで次の曲名が
浮かんだ人はよっぽどの北欧メタル
マニアだろう。
1980年。私が小学校高学年の頃
母国スウェーデンよりもこの日本で
爆発的に売れたバンド『EUROPE』
の代表曲
『The Final Countdown』だ。

終へのカウントダウン。
ヒロユキに抱いた印象はまさにその曲だった。

月曜日、バイトが休みだった私は
ヒロユキがバイトを始めたスナックへ
足を運んだ。彼が心配だったか?
どちらかというと野次馬根性の方だ。

二人はまだ客のいない店内で
いちゃついていた。ため息が出る。
が仕方ない。ヒロユキにとって
ミナは初めての彼女なのだ。

キスはしたのかい?
からかい半分でそう尋ねると
ヒロユキは顔を耳まで真っ赤にし
『そんな、まだッスよ』だと。
あきれてしまう。

そんなヒロユキは簡単に説明すると
カブトムシに似ている。
顔が?いいえ全体の雰囲気が。
だから美人のミナが彼の何を気に入ったのか
いまだ不思議だった。

私がバイト先を訪ねた翌日
ヒロユキから電話があった。
丁度この曲を聴いている時だった。

ツヅク

合掌

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