127発目 ヒロユキとミナの話。


舞台IMG_1606

二人が出会ったのは、ヒロユキが21歳。
ミナが20歳だった。
天神西通りにあるバーで
ヒロユキがバイトをしていた。そこに
客として来たのがミナだ。

ヒロユキにとっては一目惚れで
とにかくミナにもう一度会いたい。
思い切って連絡先を聞いた。
ミナはうつむきながらフフフと微笑み
『まだ、会ったばかりだから』と
かわした。

ヒロユキはそんな言葉にめげず
『じゃあ、バイトもうすぐ終わりだから
待ってて。飯でも食べに行こう』と
誘ってみる。
意外にもミナは快諾した。
何を食べさせてくれるの?
と甘えた声を出す。

ヒロユキの横、カウンターの
内側でグラスを拭きながら私は
ミナに違和感を覚えていた。
何が?と聞かれると分からないが
直感が『こいつは怪しい』と
警鐘を鳴らすのだ。

サトルさんも付いてきてください。
盛り上げて欲しいんです。と私に
懇願するヒロユキは完全に
有頂天だ。

店が終わり近所の蕎麦屋で
カツ丼を食べる。ミナは鴨南蛮だ。

中洲のホステスをアフターに
誘った場合、ほとんどが『藪』という
蕎麦屋に連れて行き鴨南蛮を
注文する。
私が抱いた違和感はこれだったのか?
水商売の女か?

時刻は3時をまわり。私は
そろそろ失礼するよと
二人を置いて帰ろうとした。
ヒロユキはまだ帰らないでくれと
すがる。

カラオケに行こう。

大丈夫かヒロユキ。
この女は嫌な予感がする。
適当なところで手を引け。
熱くなるな。

年上の私の忠告をヒロユキは
受け止めようとはしなかった。
『あんなイイ女、二度と会えませんよ』
好きになったんです、と。

性懲りもなく
ツヅク

合掌

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