745発目 古くからの言葉に従った結果が失敗だった話。


『木を隠すなら森の中。』

 

この言葉の意味は
モノを隠すなら同種の
群がりの中に紛れ込ませるのが
最適である、という意味で
使われる慣用句だ。

 

どうゆう時に
この言葉が役に立つか?

例えばとても高価な
ダイヤモンドを持っていたとする。

そのダイヤモンドが
盗まれないように
どこかに隠すなら
イミテーションの
中にぽいって入れておくと
見つかりにくいぞ、って
つまりそうゆうことらしい。

 

おい。

 

その方法だと
隠した人もどれが本物か
分からんくならんか?

 

もっと言うなら
イミテーションごと
持っていかれるやろ?

 

まあ、この慣用句が
実生活で役立つことは
まず無いな、と
高をくくっていた。

 

高をくくる
大した事ないだろうと
甘く見積もること。

 

 

仕事で大事な商談に
臨むとき、ゲン担ぎで
以前にうまくいった時と
同じ格好をすることが
多々ある。

 

そんなジンクスを
気にしている営業マンは
私以外にもたくさん
いるだろう。

 

例えば
このハンカチを持っていたら
結構な確率で契約になる、とか

このネクタイの時は
交渉がうまくいく、とか、だ。

 

そして私のジンクスは
このグレーのスラックスだった。

 

薄く白いストライプが入っており
裾丈やベルトループ、ポケット
細部に至るまでが
私の好みなのだ。

 

今日の大事な商談のために
私は迷わずそのグレーの
スラックスを選んでいた。

 

商談相手とのアポは
13時ちょうどだった。

 

 

私のオフィスからは
車でおよそ30分ほどかかる。

 

昼食を摂るかどうか
ギリギリ悩む時間帯だ。

 

朝礼を終え、トイレに入る。

これもいつものルーティンだ。

小用を足し、洗面の鏡の前に立つ。

髪型を整え、ふと股間のあたりに
シミがあることに気が付いた。

 

あれ?

 

鏡越しではなく、直接確認してみた。

 

ああ。

 

残尿だ。

 

どうする?
明らかにシミになってるぞ。
大丈夫か?
乾くか。
幸いアポは昼過ぎだ。
いやしかし、この状態で
オフィスに戻ると
ほかの従業員たちに
見られてしまう。

 

私はこう見えて
このオフィスでは
責任者という地位だ。

 

支店長がおしっこを
しかぶった。

 

そう。
福岡の方言では
おしっこを漏らすことを
しかぶる、と言うのだ。

 

それだけは避けねば。

 

じゃあ、どうする?

 

木を隠すなら森の中?
だったらシミを隠すなら
シミの中じゃないか。

 

私は早速蛇口をひねり
勢いよく出てくる水を
両手ですくい、
それを股間にぶっかけた。

 

股間を見つめる。

 

大変だ。

 

びちょ濡れじゃないか。

 

さっきまで少し尿が漏れた
おじさんだったのに
あっという間に
おしっこをしかぶった
おっさん、になってしまった。

 

ああ、なんだか下着まで
濡れてきたぞ。

 

結局私は従業員に見られないように
社用車に乗り込み自宅へ戻り
スラックスを履き替えた。

結局、商談もうまくいかなかった。

 

慣用句は信じちゃだめ。

 

ニョウモレノオサーン

 

合掌

 

 

 

 

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