伊坂幸太郎の新作、シーソーモンスターを読んだだろうか?
本作品はシーソーモンスターとスピンモンスターという2作品が収録されている。
音楽ではないので、収録という表現はおかしいだろうが、それ以外の言葉が浮かばないので許して欲しい。
この2作は全く別の作品なのに、続編のような、妙なつながりがあり、それは登場人物がリンクしてたり、ストーリーの中心を担う「海族」と「山族」の関係だったりが、複雑に絡み合っている。
2作品と前述したが、私自身はこれを一つの長編作品として捉えている。
~シーソーモンスター~
製薬会社に勤める北山は妻と自分の母親との相性が悪いことに頭を悩ませていた。彼は妻の宮子の結婚前の仕事について知らされてないが、彼女は国の情報機関に勤めていた。
その宮子と自分の母親セツ子がどうにも相性が悪いのだ。
ある日、宮子はセツ子の周辺であまりにも人が死んでいることに気づく。これはもしや義母の仕業ではないか?と疑いだす。
かつての同僚にセツ子の周辺を洗ってもらうように依頼する。ちょうど同時期にセツ子の留守、つまり宮子が一人で留守番をしていたら保険のセールスがやって来る。
彼は宮子の目が一つだけ青いことに気がつく。そしてセツ子さんの耳は大きいですよね?と宮子に聞く。
そもそも二人の相性が悪いのは海族と山族の対立のせいだ、と保険屋は言う。
意味深なセリフを残し読者を混乱させる保険屋の石黒市夫、北山に迫る危険、父親の死の謎、セツ子は本当に父親の死に関わっているのか?保険屋とセツ子との関係は?
複雑に入り組んだ謎と謎が最後の結末に向かって、まるでジグソーパズルの残り数個のピースがぱちりぱちりと嵌っていくかのように謎が解けていく。
これを読むあなたも、きっと一気に最後まで読むだろう。そして疲れてほっと息を吐くだろう。とりあえず、ひと休みしてくれ。コーヒーでも飲むかい?
ゆっくり休憩したら、後半戦に突入だ。
~スピンモンスター~
時代は近未来、2030年ごろの日本だ。家族でドライブに出かけていた檜山は自動運転の車の暴走により、同乗していた父親と母親、そして姉を一度に失った。
偶然だが事故の相手方も同じ境遇で、息子の水戸だけが生き残った。
高校生になった水戸はある日、教室に入ってきた転校生を見てどきりとする。あの事故の相手方、唯一の生き残りの檜山だったのだ。
同じ境遇だから仲良くなれそうなものだが、水戸も檜山もお互いが顔を合わせるとぎくしゃくしてしまう。
やがて高校を卒業した水戸は紙の手紙を配達する仕事に就く。ある日、新幹線に乗って北海道に向かう車内で見知らぬ男に手紙を託される。
しかたなく仙台で途中下車した水戸はその手紙を届けるべく目的の場所に向かう。そこで手紙が来るのを待っていた男、中尊寺は手紙を読むや否や、行動をしだす。
「君の言う通りだった。
オッペルと象。」
手紙にはそれしか書いてなかった。その謎を解こうと動き出した中尊寺に導かれるように水戸は後を付いて行く。その先に何があるのか?
オッペルと象とは何か? あの男は何故、水戸に手紙を託したのか?
真相に近づいたとき、前半戦のストーリーとこの後半戦のストーリーが絶妙に絡まって来る。そこからは、おそらくあなたはトイレに行くのも忘れて最後まで読みふけるだろう。
読書の秋か?とにかく秋の夜長に持って来いの1作だ。さあ、ぽちんとしな。