714発目 明日を違う毎日にする話。


私が子供の頃は

その会社のことを

「東洋陶器機器」

と呼んでいた。

 

略して「とうとう」だ。

 

今では社名を変更して

TOTO株式会社と

名乗っている。

 

私の故郷である

北九州市小倉北区に

本社を構える

世界的企業だ。

 

他都市に行って

お国自慢をするとき

私は必ずTOTO自慢をする。

 

それくらい誇れる企業だ。

 

その企業が掲げるスローガンが

本日のタイトルにもなっている

 

「あしたをちがうまいにちに」

だ。

 

今日とは違う明日、

そして明日とは違う未来が

僕らを待ってくれている、

そう思うと、胸の中が

じんわりと温かくなる。

 

日本で最初にユニットバスを

発売したのも実はTOTOだ。

 

だが、しかしそれよりも

忘れてならないのは

伝家の宝刀である

トイレだろう。

 

ウォシュレットなんていう

画期的な商品を開発し

「おしりだって洗ってほしい」

という流行語まで生み出したのは

記憶に新しい。(全然新しくない。)

 

TOTOはお尻を洗うだけでは

満足せずに、日々トイレ空間を

研究し、快適なトイレづくりに

励んでいる。

 

今では、トイレの前に立つと

それをトイレが察知して

自動で蓋を上げてくれるように

なった。

 

 

知り合いの社長の家に

台湾からホームステイに

来ている子がいる、という

話を聞いたのは、

暑い夏が終わったころだった。

 

自宅で歓迎会をするから

ヤマシタ君もおいでよ

と誘われた。

 

「でも私、中国語、話せませんよ。」

 

「大丈夫。日本語ペラペラだから」

 

社長は平日の夜を指定してきた。

仕事があるのでちょっと遅れるが

行きますと伝え、当日を

楽しみに待った。

 

思ったよりも仕事が長引き

社長宅へ着いた時には

私以外の誰もが

既に酔っ払いになっていた。

 

ヘロヘロした口調で

社長が私にその台湾留学生を

紹介してくれた。

 

彼はソンと名乗った。

「孫」と書くんだと

手の平にすっぽり収まるくらいの

小さなメモ帳に書いて見せてくれた。

 

どうしても日本語が

分からないときには

このメモ帳に漢字を書くと

意外と通じる、とも

教えてくれた。

 

なるほど、確かに

その手があったか、と感心した。

 

「私が日本に来て

一番驚いたのは

駅のトイレがすごく

綺麗なことでした。」

 

ソン君は興奮気味に

話始めた。

 

「用を足した後、

お尻を洗ってくれるなんて

とても驚きました。」

 

その話を聞いていた社長が

 

「ソン君、ウチのトイレは

目の前に立つと蓋が自動で

開くんだよ」

【TCF2222E】トートー ウォシュレット BV2 脱臭機能付き (色選べます) (旧品番TCF2221E) 【TOTO】

 

と自慢げに言い放った。

 

ソン君は目を真ん丸に見開いて

「そんなことが出来るんですか!」

と驚いた。

 

「ほら、試しにおしっこしておいでよ」

 

ソン君は言われるままに

トイレに向かった。

 

しばらくして戻って来たソン君は

少し浮かない顔をしていた。

 

「どうしたと?ソン君」

 

「私が行っても蓋は

開いてくれませんでした。

残念です。なぜでしょうか?」

 

意地悪な社長がソン君に

 

「ソン君のちんちんが小さ過ぎたんやろ?

だからセンサーが反応出来んやったったい。」

 

と言った。

 

ソン君は少し悔しそうな顔をして

うつむいてしまった。

 

私はソン君を励まそうとして

TOTOの蘊蓄を喋りまくった。

 

ソン君は私の顔を見て

 

「そんなに優良企業がつくった

トイレなのに、なぜ私だけ

蓋が開きませんか?」

 

と詰め寄られた。

 

私も少し意地悪をしたくなり

ソン君に笑いながら

 

「それはやっぱり

ソン君のちんちんが・・・」

 

私のセリフを遮るように

ソン君は大声をだした。

 

「チャオタイ!

チャオタイ!」

 

そして胸のポケットから

例のメモ帳を取り出すと

何かを書いて私に見せた。

 

そこには

 

超 大

 

とだけ書いてあった。

 

私はそのメモ帳を手に取り

こう書いてあげた。

 

「あしたと違う毎日」

 

ダイジョウブ、オレモチイサイヨ

 

合掌

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

*