707発目 オサーンが作る流行の話。


流行って誰が作ってるんだ?


ふと、そんな疑問が頭を

よぎった。


キャンプの帰り、日帰り温泉の
散髪屋でのことだ。


我が家はキャンプの帰りに
必ず温泉に立ち寄る。
前日の汚れを落としたり
疲れた体を癒すのが
主な目的だが、
そこに散髪屋があると
つい、散髪をしてしまう。

散髪屋特有の椅子に座り
後ろに立ったオサ~ンに
鏡越しで注文する。


ここで、一つ問題が生じる。


私は今までの人生の中で
ただの一度も
満足の行く髪型に
なったことがないのだ。


原因ははっきりしている。

伝えられないからだ。



私は自他ともに認める
社交的な性格だ。
明るいし、おしゃべりが
大好きだし。

何より、見知らぬ人に
話しかけることに
大したストレスを
感じることがないのだ。

なのに。

な・の・に!


鏡越しのオサ~ンに対してのみ
引っ込み思案になるのだ。


小さな声で
「じゃ、全体的に短く」
ってつぶやいてしまう。

「え?じゃあ横と後ろは刈りあげちゃう?」



本当は刈りあげなんて嫌なのに
言い返すこともできずに
「あ、じゃあそれで」
と、合意してしまう。


ああ、はっきりと
言うべきだった。
刈りあげは嫌だ!
と言うべきだった。


オサーンは私の頭に
シュシュシュと
スプレーで水をかけ、
コームを使って七三分けみたいに
していく。
そして、おもむろに取り出した
青いバリカンで


ぞり~ん


一気に分け目まで
刈りあげてしまった。


まてまてまて!


おいおいおい!


震災刈りやん!


嫌や~。恥ずかしい~。

ちなみに震災刈りって
こんなのね。

私は思い切ってオサーンに
話しかける。

「あ、あのう」

「はい?」

「こんなに刈りあげるんですか?」

「え?だってお兄さん
短くって言うから」


『ここまで短い話は
してないやろがい!』
(心の声)

「あ、でもてっぺんが
結構残ってるというか・」

「ああ、大丈夫よ
これから揃えていくから」


そういうとオサーンは
反対側も青いバリカンで
ぞり~んとイってくれた。


最終的にはてっぺんも
バリカンでゴリゴリやりだし
出来上がった頭は
「先っぽの軽くとがった坊主」
になっていた。

『こんな髪型、流行ってないやん』
(心の声)


「はい、出来ました。」

オサーンは得意げに
もう一つの鏡を使って
私の後頭部を前の鏡に
映し出した。

鏡の中の私の横に
オサーンが映っている。


私の髪型はオサーンと
まったく同じ髪型だった。

結論;
このオサーンは自分と同じ髪型の
男を量産して流行を作ろうと
している。


トンガリボウズ

合掌

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