携帯電話で会話しながら車の運転をすると、どんなことが起こるか分かってるか?事故を起こす確率が上がるだけではなくて、こんな悲劇を巻き起こすんだぞ。
街中をピンクに染めた桜が散り、高台から街に向かって吹いてくる風が心地よい。横浜はすっかり春を迎えた。
仕事柄、車での移動が多いのだが、窓を閉めて走ると暑いが全開だと少し肌寒い。かと言って窓を閉め切ってエアコンを入れるのは、なんだか春に申し訳ない気がする。
肌寒いくらいが何だ! 俺は寒いの我慢してでも窓は全開で走るぞ!それがこの春の陽気を楽しむ唯一の方法であり、そしてそれが春に対する正しい付き合い方じゃないか?
会社の同僚たちは花粉症が多いので、きっと窓を閉め切ってるんだろうな。かわいそうに。春を感じることもなく夏を迎えて「暑い暑い」と騒ぎ出すんだろうな。
信号待ちで、ふと隣を見ると、若い外回りの営業マンが車の中で鼻をかんでいた。窓は閉め切っている。きっと花粉症なのだな。かわいそうに。
信号が青に変わり、車が一斉に進みだした。しばらく行くと大きな通りに出た。そこは交通量も多く、トラックやダンプカー、路線バスなどの大型の車が行き交っている。その車の吐き出す排気ガスは、さすがに季節感はなく、ただただ迷惑なだけだ。仕方なく窓を閉めるが、一度入って来た排気ガスの悪臭は、そう簡単には取れそうもない。
遠回りにはなるが、もう一度、わき道に入って窓を全開にし、心地よく走ろうと決めた。
くしゅん。
先ほどの排気ガスのせいだろうか?そういえば俺は花粉症ではないがハウスダストのアレルギーをもっていたのだった。
くしゅん、くしゅん。
信号で停車すると、右折レーンに滑り込んで来た車を運転していた若い女性は、携帯電話で誰かと話している。俺がお巡りさんだったら、喜んで捕まえるだろう。 たったいま洗車してきたかのように、ピカピカに光る赤いボディは眩しいくらいだった。
くしゅん。
そういえば、太陽や電球などの光をみるとくしゃみが出るが、あれはどういう仕組みなのだろう?こんなピカピカの車のボディでもくしゃみを誘発するのだろうか?
くっしゅん!
くしょん!
くしょん!
ああ、いかん。くしゃみが止まらんくなったぞ。
どおおおおぇぇぇぇっくしょ~ん!
ぺしょ。
俺の口から飛んで行った「たん」がピカピカの赤いボディに着地した。自分の「たん」でありながら自分で触るのも嫌なのに、他人の「たん」をつけられた車を運転するのは一体、どんな気分だろう? 運転席をみると運転手はまだ携帯電話でお話に夢中だった。
ほらね。
車の運転中に携帯電話で会話なんかしたりすると、他人から「たん」をひっかけられるんだよ。
気を付けよう、春の陽気とハウスダスト。
コウツウアンゼンシュウカン
合掌