中学生くらいの頃から今まで、主に洋楽を聴いて過ごした。だからと言うわけではないがカラオケなどでも海外の曲を歌ったりすることもある。一度、外国人バーでオアシスの曲を歌った時にアメリカ人のダンサーに「発音が良い」と褒められたことがある。
だから、少し調子に乗っていたのかもしれない。 自信過剰になっていたのかもしれない。
伊勢神宮に参拝に来ている人たちには欧米の方々も多く含まれている。日本人だけでなく海外の人にとっても興味深いスポットなのだろう。
いわゆるバックパッカーと言うのだろうか?若い外国人女性が手元の地図とにらめっこしながらキョロキョロしていた。道に迷ったのだろうか? 確かに伊勢神宮の内宮は広大な敷地面積を誇る。東京ドーム何個分だろうか?日本人でも迷いそうになるのに外国人なら尚更だろう。
親切心で声をかけるべきだ!と思ったのは、その外国人女性が若くて綺麗だったからだけではなく、過去にあのダンサーから「発音が良い」と言われた記憶がよみがえったからだ。
「イクスキュ~ズミ~」
怪しまれない程度の笑顔で近づいて行った私に、警戒心を完全には解かずに彼女は振り向いた。
「メイアイヘルプユ~?」
彼女は少しほっとした表情でベラベラーっと喋りだした。
あれ?
なんだこれ?全然聞き取れないぞ。
仕方ない。私は奥の手を出した。
「Would You speak more slowly please?」
もっとゆっくり話してくれますか?という丁寧な表現のはずだ。これでバッチリか?
「ぺらぺらぺ~ら、ぺらぺら。」
ダメだ!全っ然 分からん! あれ?もしかして英語じゃないのか?
「Where did you come from ?」
念のため聞いてみた。どこから来たの?という意味のはずだ。
彼女はなんだかイライラした表情で、かろうじてこう言った。
「ワタシ ニホンゴ ワカリマセン!」
え~?
英語で言ったのに?
カルクショック
合掌