不動産や建築の仕事をしていると、単価で話をすることが多い。 坪当たりいくら、とか。 ㎡当たりいくら、とか。 何故か? 分かりやすいからだ。
一般の人にしてみれば分かりにくいのかもしれない。 だが、この仕事に慣れると単価の方が分かりやすい。
例えば、300坪の売り地があったとする。 売価は3億円だ。 坪当たり100万円ということになる。俗にいう坪単価ってヤツだ。 一方1500坪の広大な土地が売りに出て、売価が4億5千万だったとする。坪当たり30万円ということになる。
売価だけを見れば広い土地のほうが1億5千万も高い。そりゃそうだ。広いから。 だが、単価で見ると広いほうが3分の1以下だという判断になる。 どちらの土地も建築基準法で定められた容積率が200%だとしたら、300坪のほうは600坪の建物が建てられることに対し、1500坪の広い土地には3000坪の建物が建てられる。 5倍だ。 5倍の建物が建てられるのに単価は3分の1以下ならどちらのほうが魅力的か?言わずもがなだ。
慣れてくると何でも単価で考えてしまう癖が出来る。
あなたの単価はおいくら?
こう聞かれて答えられる人は何人いるだろうか? もしかしたら一人もいないかもしれない。
分かりやすく説明せねばなるまい。
とある企業の派遣社員が私用のスマートホンを使い、故意に情報を持ち出した。 その中にはその企業の顧客の個人情報も含まれていた。 報道によると約3500万件の個人情報が漏洩したそうだ。 この企業はもちろん、その派遣社員を解雇し、その後顧客への対応として200億円もの費用がかかったそうだ。
3500人分の個人情報が漏れて200億円の費用がかかった。つまり一人当たり571円だ。
日本年金機構に送られてきた悪意ある人からのメールを開き、個人情報が盗まれた。このとき漏洩した個人情報は約125万件。対応費用は約8億円。一人当たり640円ということになる。
単価だ。
あなたの個人情報は以上の二つの事件だけで照らし合わせてみても、およそ600円/人と言うことになる。 少ないか?多いか?
あるポータルサイトのアカウントを持っている私の元に1通のメールが送られてきた。
「このたび、当社のサーバーに何者かが侵入し個人情報が盗まれました。個別に対応しますので許してちょんまげ」
という内容だった。 後日、私の元に1通の封書が届いた。 封を開けて手紙を取り出す。 そこには丁寧な文章で謝罪の言葉が並べられており、その内容から推察すると、私たちが悪いんじゃなく悪意ある許せない奴らが悪いんですよ、でも当社はそれなりの謝罪をしますよ、ということを言いたかったようだ。
封書と併せて為替が入っていた。郵便局に持っていけば現金に換えてくれるというものだ。 せめてのお詫びにこのお金を受け取ってください、ということだ。
額面は500円。
安っ!
オレの単価、安っ!
奥様にその引換券を渡し、後日郵便局で換金してきてねとお願いした。
自宅からの最寄の郵便局は駐車場がないので、バスで行くとのことだった。往復のバス代が420円だった。差し引き80円。
私の単価は80円、と決定した。
帰宅し、奥様に話を聞いたらバスで隣の奥様と一緒になり郵便局の帰りにカフェでお茶をしたとのこと。 その費用は目をつぶろう。 隣の旦那さんは身長160センチで私は180センチだ。
我々の単価は隣の旦那さんが1センチ当たり0.5円。私が0.44円。
0.44円/cm!
ため息しか出ないな。
結論。
単価のほうが分かりにくい。
ソレニシテモヤスイ
合掌