579発目 優しさに応えられない話。


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横浜に越してきて、2ヶ月が経過した。 新しい職場のメンバーにも恵まれ、他所から来たにもかかわらず、周囲の優しさに支えられながらどうにか業務をこなしている。 とはいえ、私に与えられたミッションは営業職なので当然のように営業ノルマがあり、そのどれもが未達成のまま時間だけが過ぎている。

 

せめて上長が恥をかかないように、実績を残したいと思う。思うのだが、やはりその優しさに甘えてしまう自分もいる。

 

私の部署の最高責任者は営業部部長である。 この部長と言う人が、とても優しい。 微に入り細に入り、という言葉がぴったりなくらい細かいところまで気が回る方である。

 

営業の基本的な形態としては、日々得意先を訪問し紹介を発掘していく作業なのだが、地方勤務のときと違って車は使わずほとんどを公共交通機関を使用して廻る。 たまに、社用車を使うくらいだ。 出番の少ない社用車は3人のメンバーで共有している。 そのうちの一人が部長なのだが、私が来る以前は、自分専用だった社用車を私と共有してくれているのだ。もちろん、経費削減の意味もあるのだろう。

 

「ヤマちゃん、車にのってるサンダルはさ、長距離運転の時って疲れるだろ?だからさ、使っていいよ。」

 

なんと!

 

そんな気遣いまでしてくれるのか! なんて優しい人なのだ!と感激して涙が出そうだった。

 

その日は、社用車を運転して少し遠出する予定だった。 いつものように部長にお伺いを立てる。

 

「部長、本日は車を使ってもよろしいでしょうか?」

 

「ああ、いいよ。どこまで行くの?」

 

「はい、横須賀まで行きます。」

 

「あら、遠いね。気をつけてね。あ!サンダル使っていいからね。」

 

ああ、優しい。

 

分かりました。あなたのサンダルは私が責任を持って履かせて戴きます!

 

車に乗り込み、ナビゲーションシステムに行き先を入力する。 車のフロアを見渡すと運転席の下にサンダルが置いてあった。

 

あったあった、これだな、と私はサンダルを引っ張り出し窮屈な革靴を脱ぎ、履き替える。

 

あれ?

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入らん!

 

部長、どうやらあなたの優しさに、あたくし応えられそうにありません。

 

サイズ チッサ

 

合掌

 

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