569発目 嫉妬する男の話。


クロネコ

首都圏での仕事は地方の営業と違って電車を多用する。そのため、要所要所で時間をつぶすために喫茶店を利用する頻度が増えた。

 

喫茶店といっても最近じゃカウンターで注文し、商品を自分で席まで運ばなくてはならない。昔ながらの、席で注文し持ってきてもらうタイプが個人的には好みなのだが、時代の流れだろう、我慢するしかない。

 

今日も、待ち時間を喫茶店で過ごした。 薄いコーヒーを窓際のカウンターに座って飲む。 角から3番目を陣取った。 角からの二席はカップルが座っている。 ああ、これはブログのネタになるかな?と思い、二人の会話に耳を集中させる。

 

「この後、どうする?」

 

「あ、私さ用事あんだよね。」

 

「なんで?」

 

おそらく、彼はこの後も一緒の時間を過ごし、何とか夜まで時間をつぶしゴニョゴニョまで持っていこうと画策していたんだろう。彼女の方が用事があると言った途端に明らかに不機嫌になった。

 

俺との時間より優先する用事って何だよ!、と。

 

「いやあ、今からヤマトが来るんだよね。」

 

ガタンと席を立ち上がる彼。 彼女を見下ろし、だが周囲の目もあるので抑え気味の声で彼女を恫喝した。

 

「ヤマトって誰だよ!」

 

彼女は当惑した表情を見せた。 ほほう。見ものだぞ、これは。 修羅場か?

 

しゅらば【修羅場】
阿修羅と帝釈天が闘争を繰り返す場、の意。
生命のやり取りをする激しい闘争の演じられる場。
狭儀では荒れ場。

 

だが、私の意に反して彼女は軽く、ごくごく かる~く、こう答えた。

 

「宅急便だよ」

 

クロネコ

 

合掌

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