553発目 蛇足の話。


シナチク

わかりやすく言うとね。こういう事なんだよ。

 

お祭りの前日に主催者が、準備に携わってくれたスタッフ全員にお酒を振舞ってくれたのさ。スタッフの数は21人だったけど配られた酒は20杯だったわけ。 おいおい、どうする?ってなったんだけど、誰かがこう言い出したんだ。「じゃあさ、みんなで一斉に蛇の絵を描いて描き終わった奴から飲んでいいことにしようぜ!」 全員はその提案に同意したんだ。

 

一番最初に描き終えた奴は余裕の表情で酒を飲もうとしたのさ。ぱっと周囲を見回すとまだみんなは一生懸命描いている。「へっ、遅いなこいつ等」と思いつつ、そいつは自分が描いた蛇の絵に足を継ぎ足したんだ。

 

二番目に描き終えた奴が「へへ、オレも終わったぜ」と近づいてきて、一番目の奴の絵を覗き込んだら、どうみても蛇じゃない絵を描いてる。

 

「お前、これ、ツチノコやん!」

 

そう言って一番目の奴から酒を取り上げたって話さ。 つまりね。 会社のトップは既に確固たる地位を得ているのに、無駄な戦いをするとその地位を失いますよ、って事が言いたかったわけ。

 

転じて、「蛇足」は余計な行為とか付け加える必要の無い余分なものって意味になったわけさ。

 

オレにとっての蛇足っていうのはさ、シナチクなんだよね。

 

シナチク。知ってる? そう、あの醤油ラーメンや味噌ラーメンに入ってる奴。 あれ蛇足だよなぁ。大体、何だよ!シナチクって。何で出来てるんだよ!って思ってた。

 

そしたらさ、テレビでシナチクを一から作るってのをやってたんだ。びっくりだよ。原料は竹でやんの!竹かい!って。

 

そもそも竹の子だってさ、一日か二日、収穫の時期を間違っただけで不味くなるのに、竹だぜ!竹を食うなんて考えられんわ!まさかかぐや姫だってさ、自分が住んでた竹がその後、シナチクになって人間に食べられてるなんて夢にも思わねえだろ?

 

「ここはさ、オススメのラーメン屋なんだよ。何しろシナチクが美味い」

 

なんてレビューを食べログで見たことある?ないだろ?すげえ余計なんだよ。いらねえんだよ、シナチク。

 

北海道のコンビニで「おにぎり温めますか?」って聞いてくるくらい余計なんだよ。区役所の住民票を出してくれる女性のことをいちいち「少し太った女性」って表現するくらい余計だよ。

 

博多のトンコツラーメンには入ってないだろ? シナチクみたいな余計なものは入ってないんだよ。ん?キクラゲ? ああ、確かにあれも何で出来てるか分からんね。なんとなくアレだよね、食感がさ。海辺で遊んでて足がにゅるっとしてさ、「うひゃ」ってなった時の感じに似てるよね。じゃあ、あれじゃねえの?海草?みたいな奴?だったら許せるやん? 味もあんまりしないしね。ウチの会長なんて、キクラゲ大好きだからさ、「ヤマシタ、キクラゲの替え玉ってないのか?」って聞いてくるくらいなんだよ。一定の評価は得てるんだよ。

 

どっちが許せないかって言ったら、やっぱシナチクだろ?

 

臭えしさ。シナチク。

 

でね、一番許せないのはさ、北海道のラーメン屋なんだよ。

 

オレがさ、「すいません。シナチクは抜いてください」って言うだろ。そしたらさ、決まってこう言うんだよ。

 

「はい。メンマ抜きですね」って。

 

必ず、言い直すのさ。「メンマ」って。 カ・ナ・ラ・ズ。

 

オレが腹立つの分かるだろ?必ずだぜ?今のトコ100%言われてるからね、オレ。だからさ、こう言い返すのさ。

 

「はい。シナチクです。」って。

 

これってさ、どっちが蛇足なんだろ?

 

オレカ?

 

合掌

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