私が勤める会社では役職とは別に職位というものがある。 だから誰かを呼ぶときは名前の後に役職を付けるかもしくは職位で呼ぶかで迷う場合もある。オフィシャルでは『分からなくなったら「さん」付けで呼べ!』となってるから、私はほとんどの人を「さん」付けで呼んでいる。
「さん」を付ける時のルールとして、”本当の名前の後に「さん」を付ける” という規制を自分に課している。
「ヤマシタ、当たり前だろ?」
と思ったか? 意外とそうでもないぞ。例えばだ。 最近テレビを観ているとお笑い芸人がどのチャンネルにも映っている。 彼らは本名で活動していたり芸名の場合もある。若手芸人が先輩芸人を呼ぶ際に、
「ダウンタウンさん」
と呼んでいるのを聞いたことがないか?
あれは二人をいっぺんに呼んで、しかも敬称を付けたから文句ないだろ?という感じがして私は嫌いなのだ。そもそも敬っているのなら面倒くさがらずに一人づつ敬称を付けて呼ぶべきなのだ。ひどい奴なんかは「AKB48さん」と呼んでいる。グループ名やコンビ名に敬称を付けるのはひどく滑稽だ。
私のルールだと「ダウンタウンさん」みたいな言い方はアウトだ。
では、相手が芸名の場合はどうか?という疑問が残る。
先日、東京に出張に行った際、有楽町線の銀座駅でブル中野を見た。私は彼女がダンプ松本と活躍していた当時、大のファンだった。だから彼女について詳しいという自負がある。彼女は私より2つ年上で、現在はプロレスラーだった面影はすっかりなくなり、美人のお姉さんになっている。それでも私は気が付いた。当然、ファンなので話しかけようとしたのだが、ここで思いとどまった。
「ブル中野」に敬称はいるか?
当然だがブル中野はリングネームで、大きくジャンル分けすれば商品名みたいなモンじゃないか?どこの世界に「かっぱえびせんさん」って言う奴がおるか?彼女の本名は「青木恵子」だ。敬称を付けるとしたら本名の方だ!それが私のルールだ!
結論が出てから私は彼女の後を追い、話しかけた。
「ブル中野ですよね?」
「あ、はい。よく分かりましたね?」
「はい、ブル中野のファンなので。いや、厳密に言うとファンだったという方が正しいかも」
「ああ、お兄さんいくつ?」
あれ?ちょっと不機嫌そうだぞ。やばいな。ギロチンドロップをされるかも?
「え~っと。私はブル中野の2コ下です。」
「だったらさ、さんくらいつけろよ!」
っこわ~!優しそうな外見になっているのに、怖い~!
「あ、いや青木さん、ちょっと待ってください。」
「本名で呼んでんじゃねえよ。」
「いやでも、ブル中野はリングネームですから、あれでしょ?ニックネームみたいなモンじゃないですか?女帝は呼び捨てででもいいんでしょ?」
私は上半身をガードしながら懸命に言い訳した。
「獄門党さんって言ったらおかしくないすか?青木さんって本名はさん付けしてるじゃないですか!グリズリー岩本さんはそんなことで怒りませんでしたよ!」
「ちっ。もういいよ。あっち行けよ」
私は自分のちっぽけなこだわりで、何かを失っているということに気が付いた。
結論。
妙なルールにとらわれず、すべての人を「さん」付けで呼ぼう。
それにしてもきれいになってたなぁ。
マタアイタイ
合掌