「ヤマシタさんてモテるでしょ?」
「いや、全然。だって俺もう45よ。おっさんやろ?」
「え~?見えません!もっと若いかと思った~。」
「見えるやろ!45なりの体型やし、頭皮の脂はすごいし、フケはでるし、痰はからむし、おならは臭いし。」
「そんなことないですよ~。見た目は太ってないし、こうして近くにいても全然臭くないですよ~。たまに横にいるだけで息ができなくなるおじさんとかいらっしゃいますけど、ヤマシタさんは全く。」
「ホントに~?嘘っぽいなあ。じゃ、俺とデートしてもいいと思える?」
「全然、OKですよ~。逆に私なんかでいいんですかって感じですよ。」
というやり取りを、40になってからだけでも、7万回くらいしてきた。ヤマシタのアホが、若い女の言うことを真に受けやがって、と思うかい? 残念ながらヤマシタは他の誰よりも、ホステスの「今度食事に行きましょう」の「今度」が永遠に来ないことを知っている。
7万回もこの会話をしていて、デートをしたことなど数回しかない。 おいおい! じゃ、何回かはあるんかい! と突っ込みたくなったかい? そりゃ、何回かはあるよ。 でもその全ては、「7時までにお店にいかなきゃ怒られる」 とか 「今日は同伴でいいんですよね?」 とか、だ。 みんなが思い描いてるような、映画を観て買い物を少しして、食事をして、どちらかの家に行って、キスして・・・っていうことは皆無だ。
「全然、OKですよ~。逆に私なんかでいいんですかって感じですよ。」
「そんなん言って、絶対デートなんかしてくれんや~ん!」
「え!じゃあホントに今度行きましょうよ」
「うん、今度っていつ?」
「え~っと、手帳見ないとシフトが分かんないんで、あとで教えます。あ!っていうか連絡先聞いてもいいですか?LINEやってます?」
お!ヤマシタ。とうとうデートにこぎつけたじゃないか! と思ったか? この子とはこれ以来、顔も見てないぞ。連絡? 来てないな。 LINE? 追加すらされてないぞ。気になったので別の日に別の女の子に聞いてみたら、もう辞めてたぞ。
いいか、お前ら、もう一度だけ言うぞ。ホステスの言う「今度」は永遠に来ないぞ。
世の中に絶対はないけど、これだけは言える。
「今度」は「絶対」来ない。
え?
とっくに知ってた?
それは
シツレイシマシタ
合掌