方言ではなく、その地域独特の
言い回しってモノがあるんだ、
という事に気がついた。
最初はその人の口癖かな?
と思ったのだが、別の人も
言ってたから、おそらく札幌独特の
言い回しなのだろう。
『却ってすみません。』
何だ?どういう意味だ?
と、引っ掛かりを覚える
言い回しだ。
ガソリンスタンドで
タイヤ交換を、お願いした。
店員は1時間ほどで完了するが
店内で待つか、それとも
店外に出かけるかを尋ねてきた。
自宅からほど近いスタンドだったので
私は1時間後に又来る旨を
言い残し、一旦自宅へ戻った。
1時間後、もう一度スタンドを
訪れた。店員がもみ手で
近づいてきて、こう言った。
「タイヤ交換は完了しました。
でもエンジンオイルが
汚れているようです。
どうします?やりますか?」
せっかくだから、やって
もらおうかな?
どれくらい時間がかかる?
「そうですね。20分ほどで。」
じゃあ、店内で待つよ。
そう言って私は備え付けの
雑誌を手にし、椅子に腰掛けた。
10分後くらいに店員が
近づいてきた。
「エレメントはどうなさいますか?」
何だよ!いっぺんに言えよ!
と思ったが口に出さず、
作業にかかる時間を尋ねた。
20分くらいだと言う。
これでタイヤ交換と併せて
1時間40分か。
「せっかくだけどエレメントは
次の機会でお願いするよ」
私は丁重に断った。
その時、この店員が言った。
「却ってすみません」
最初、私が一旦、家に帰った
ことを言ってるのかと思った。
「帰って、また来てもらったのに
すみません」
と。
そういう意味かと。
でも違う。
「却ってすみません。」
ああ、もしかしたら
『コチラの方こそすみません』
って意味なのか?
いや、それだと辻褄が合わない。
それだとすると、先に
コチラがすみませんと
言った場合に限るからだ。
店員は作業に戻った。
私はイライラだけが残った気持ちで
もう一度椅子に腰掛けた。
ああ、どういう意味だろ?
気になるなぁ。
「オイル交換でお待ちの
ヤマシタさま~」
先ほどの店員が大きな声で
叫んでいる。
お前、さっきオレと
しゃべったやん!
オレの顔、分かっとるやん!
お客さんの顔が分からんときに
やるヤツやろ!それ!
と思ったが口には出さなかった。
「こちらの伝票をお持ちになって
レジへお越しください」
レジでは、女性の店員が
待っていた。
手薬煉(てぐすね)引いて待っていた。
さあ、銭を持ってこい!
みたいな感じで。
「タイヤ交換とオイル交換
ですね~。合計で14,800円
になりま~す。」
「はい、じゃあ2万からで
いいかな?」
「はい2万円お預かりしま~す。
却ってすみませ~ん。」
あ!
また言った!
こいつも言った!
何な~ん?
意味が分から~ん。
仕方ない。直接本人に
聞いてみよう。
「却ってすみませんって
この地域の言い回しなん?」
「え?」
「いや、さっきからあの男性も
君も却ってすみませんって
言うからさ。」
「え?」
質問の意味が分かってないのか?
「いや、だから・・」
「私、そんな風に言ってました?
え~!気付かなかった~!
なんか、却ってすみません」
言った!
また言った!
「ほら、また言ったやん。」
「あ~ホントだ~」
どうやら自覚はないらしい。
翌日会社で北海道出身の
社員全員に聞いてみたが
誰も分からないとのことだった。
ああ、もしかしたら
あのスタンドだけの
独特の言い回しかな?
結局、今日も未解決か。
お昼ご飯にラーメンを
食べようと高速道路の下にある
以前テレビで紹介された
本場旭川醤油ラーメンというのを
食べに行った。
70過ぎのおじいちゃんが
1人でやってる。
45年前に旭川から出て来て
それ以来、ずっとここで
やっているとTVでは
紹介されていた。
食べ終わって会計のとき、
750円を払う際に私は
千円札1枚と250円を渡した。
「はい、ありがとね」
そう言ってジジイは
お金を受け取ると
別の作業をしだした。
ん?
あれ?何か段取りがあるんかな?
私はしばらく待ってみた。
するとジジイが私を見て
まだ何か用か?みたいな
顔をしたから
「お釣りは?」
と言ってみた。
「へ?」
「いや、お釣り!1,250円
渡したやろ?釣りは結構ですって
言ってないよオレ。」
「あいや~失礼失礼。
はいよ500円のお返し。
ごめんね、ボケてるね~。」
500円を受け取り
店を出ようとしたら
背中から声が掛けられた。
『却ってすみませ~ん。』
うわ!言った!
そうか。
犯人は
アサヒカワカ
合掌