隣に人の気配を感じたので
思わず息を潜めてしまった。
別に悪いことをしているわけでは
ないので堂々とすればいいのに
条件反射というのだろうか?
肩まで竦めてしまっている。
がちゃりがちゃりと扉が開く。
乱暴に閉じられた扉に
またもやがちゃりと施錠の音が。
隣に私がいることに
気がついていないのだろうか?
それともよっぽど気分が
高揚しているのか?
見知らぬ隣人は鼻歌を
歌いだした。
ああ、なんだっけ?
この曲?
見知らぬ隣人のテンションが
上がってきたようだ。
イントロ部分は鼻歌だったのに
いきなりはっきりと歌いだした。
~well you’re dirty and sweet ~
え~?
何やったっけ?この曲~。
絶対知っとる曲や~ん。
多分、CD持っとるや~ん!
ダメだ、全然思い出せないし
いくら考えても出て来ない気がする。
そうこうしてたら、隣から
カラカラカラカラと音がしだした。
ああ!
いかん!
ケツ拭きだしたや~ん!
もう終わると~?
オレより後に来たくせに~。
ちくしょう。
オレも途中やけど
ここで一旦、終わろう。
カラカラカラカラ
ジャー。
がちゃんがちゃん。
二人はほぼ同時に
扉を開いた。
一瞬目が合う。
違う。話しかけるのは
ココじゃない。
並んで洗面台に立つ。
手を洗う。
上を向く。
鏡越しに目が合った。
ココだ!
『あの、すみません。
さっきの曲なんでしたっけ?』
『あ、聞こえてました?』
『はい。』
『Get It On ですよ。』
あ~~~~!
そうや~ん!
『デュランデュランの。』
ん?
『いや、デュランデュラン
じゃ無いですよね?』
『いえ、デュランデュランですよ。』
『失礼ですけどおいくつですか?』
『37ですけど。』
37かぁ。
37なら知らんかぁ。
『あの、T-rex ってご存知?』
『いいえ、それが何か?』
『いや、Get It On って
T-rexの曲なんですよ。』
『あ、そうなんすか?
あ、急いでるんで、これで。』
あ~逃げられた。
変な人と思われただろうなぁ。
でもさ。
T-rexのGet It Onを
カヴァーしてたのは
デュランデュランじゃなくって
パワーステーションなんだよなぁ。
少しずれてるなぁ。
良い子のみんなは
Get It On は T-rex
って覚えてね。
ドッチデモイイッテ?
合掌
ちなみにコレがオリジナル。