460発目 目が悪い話。


 

ライナーノーツ



 

朝、目が覚めると暗がりの中で息子が

本を読んでいた。

 

『お前、そんなところで本やら

読みよったら目が悪くなるぞ。』

 

と、注意した。

父親だから当然だ。

 

すると息子は

 

『目が悪くなったらどう困るん?』

 

と聞いてきた。

 

ほう。

考えても見なかったな。

 

私がメガネをかけだしたのは

26歳からだ。

それまでは『見えない』という

感覚が理解できなかった。

 

それがだんだん視力が落ちてきて

文字通り『見えない』状態に

陥った。

 

さて。

 

目が悪くなって困ったことか。

なんだろう?

 

え~っと。

 

そうだ、あの時だ。

 

よく晴れた日だった。

所沢の駅前で誰かを待っていた。

なんとなく前方に目をやると

裸の女性がいた。

わお!

待ち合わせの時間が迫っていたが

私はその裸の女性をもっと近くで

見たくて、車を降り、近づいた。

 

近寄ってみると

ベージュのスーツを着た人だった。

 

 

いや、このエピソードは

7歳の息子には話せないな。

 

そしたら、あれだ!

 

六本木のディスコを貸切にして

ダンスパーティーが行われた。

ナンパし放題!という謳い文句に誘われ

のこのこと六本木まで出かけた。

 

ダンスホールは大盛況で

まさに『立錐の余地』もないほどだった。

 

誰かが私にぶつかり、私のメガネが

割れてしまった。

 

大丈夫ですか?と声をかけてきたのは

かなりの美人だった。

 

フロアの隅に移動し

しばらくは二人で会話した。

 

店内は薄暗かったせいもある。

 

交渉が成立し、外で二人で

飲もうということになり

店外に出た。

 

メガネがない私の手を

彼女が引いてエスコートしてくれた。

 

外に出ると、そこはどっぷりと

夜だったのだが、流石は六本木。

 

ネオンで、まあ明るいこと明るいこと。

 

ふと横を見るとブスが私の

手を握っていた。

 

『お前誰や?』

 

彼女は驚いて去っていった。

 

 

だめだ。

 

コレも話せない。

 

 

『あのな、目が悪いと、大人になって

子供からナニが困るって聞かれたときに

困るぞ。』

 

息子は分かったような

分からないような不服そうな顔で

『お父さんも大変やね』

とぽつりともらした。

 

 

はあ。

 

チチオヤッテタイヘン

 

合掌

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