422発目 コチュジャンの話。


ライナーノーツ

以前、知り合いの女性から

相談事を持ちかけられた。

 

その女性は20代前半の

若い女性で、世代の違いもあり

話の合わない子だった。

 

その話の合わない子が

何故俺に?と不思議に

思っていた。

 

待ち合わせの場所に

出向くと彼女は既に

来ていてコーヒーを

飲んでいた。

 

『で、相談というのは?』

 

私は早速本題に入った。

 

正直に言うと面倒だったから

さっさと終わらせて

帰りたかったんだ。

 

『実は彼との事で・・・』

 

ほお。

 

この俺に恋愛の相談を?

 

『彼と、どうしたん?』

 

『彼と別れようと思って。』

 

『その前に何故、その相談が

俺なの?』

 

『アヤがヤマシタさんに

相談してみたらって。』

 

アヤというのは

私が良く行くスナックで

働いている子で、

昼間はOLをやっている。

 

彼女はアヤの同僚だ。

 

アヤの開催した飲み会で

この女性とも知り合った。

 

私が彼女に会うのは

この日で3回目だ。

 

アヤの奴め、面倒くさいから

俺に振ったな。と、ぴんと来た。

 

まあ、良い。

では聞かせてくれ。

その彼との出来事を。

 

『彼とであったのは

大学のときで・・・』

 

『あ、いや。そこまで

さかのぼらなくて良いよ。』

 

『あ、すみません。

最近になって別れたくなって。』

 

『どうして?嫌いになった?』

 

『いえ、好きすぎて

嫌いなんです。』

 

さあ、皆さんなら

こうゆう時、どのような

アドバイスをする?

 

好きなのに嫌い?

こいつ、何を言ってるんだ?

 

『だったらしょうがないよね

別れたら?』

 

『でも、彼が別れたくないって

言うんです。

で、今のマンションも彼名義の

賃貸なので別れるとなると

引っ越さなきゃいけなくて。』

 

『あ、じゃあ君が出て行くんだ?

だったら話は早いじゃない。』

 

『でも、私、貯金もあまりなくて

引っ越すにもどうしたらいいか・・』

 

泣いてる?

この子、引越し代がなくて

泣いてるの?

 

『だから、ヤマシタさんなら

あまりお金のかからない

引越し方法をご存知だろうって。』

 

なるほど。

それなら合点が行く。

そら、そうだよな。

20代の女性が俺みたいな

おっさんに恋愛の相談を

するわけがない。

 

『わかった。じゃなるべく

敷金とか礼金のない物件を

探しとくよ。』

 

そう言って席を立とうとした、

その時、頭の中に引っかかる

ものを感じた。

 

『あ、ところでさっきの。』

 

『え?さっき?』

 

『うん。好きすぎて

嫌いになったって、あれ。

どうゆう意味?』

 

彼女は説明してくれた。

 

彼のことが好きで、

顔も性格も仕草も。

 

~ほお、部屋とYシャツもか?

 

でもだんだん、私の

知らないことがあるのが

我慢できなくなって

見たことのないネクタイとか

していると、どうしたの?

誰かにもらったの?とか、

 

~別の女からに決まっとろうが

 

夜、一緒に部屋に居て

テレビで女性タレントをみて

褒めたりすると嫉妬するように

なったんです。

で、それがどんどん

エスカレートしていって

今ではハブラシとか

髭剃りとかにも嫉妬しだして

そしたらだんだん

彼のことが嫌いになって。

でも本当は好きなんです。

 

え~っとね

 

ど~でもいいわ!

 

全っ然、分からん!

まるっきり理解できん!

 

結局、その子は彼と別れ

私が斡旋したマンションに

引っ越した。

 

あれから15年。

 

今だにあの時の

『好きだけど嫌い』

の感覚が分からなかった。

 

が、

 

先日、焼肉屋で

頭にひらめくものが

あった。

 

もしかして、これか?

というものに出会った。

 

それがコチュジャンだ。

 

私は餃子にも焼肉にも

そこにコチュジャンがあれば

必ず入れるほど好きだ。

 

海に向かって大好きだ~と

叫べるほど好きだ。

 

だが、コチュジャンって

ちゃんと言えない。

噛む。

 

チョチュジャン、とか

コツジャン、とか

言ってしまう。

 

も~、言いにくい!

大っ嫌い!

 

はっ!

 

好きだけど嫌い!

 

これかぁ。

 

チガウトオモウ?

 

合掌

 

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