353発目 思ったより少ない話。①


ライナーノーツ

友人同士で遺恨を残すと

あまりよくないが

それを金で解決しようとすると

もっと良くない。

 

私のすぐ身近で起きた

出来事はその事を象徴する

かのような出来事だった。

 

私から見てその二人は

仲の良い姉妹のような

二人だった。

 

同期入社ではあったが

年齢が違っており、

いつも短大卒の若い子の

方が大卒の子について回る

という印象だった。

 

私と二人の関係もやはり

同期入社で飲み会などでは

一緒になるが休日を一緒に

過ごすほど仲良しではなかった。

 

あるとき、同期の全員で

ドライブに行こうという

ことになった。

 

同期の中で地方の出身は

私一人だけで、行き先を聞いても

ピンと来てないのも私だけだった。

 

私との同期入社は全部で

9名だった。

つまり男性7名と女性2名だ。

 

今回のドライブの計画は

この女性2名が行った。

 

行き先や途中の立ち寄り先、

行った先でのイベントやゲームなど

盛りだくさんの企画で

我々を楽しませてくれるとのこと。

 

大卒の女の子と、男性の一人が

車を出して目的地へ向かう。

 

2台の車に分乗して車は

関越自動車道に乗り込む。

 

途中、サービスエリアに寄って

運転手の休憩と交代を行う。

 

『ねえねえ、私が運転していい?』

 

短大卒の女の子が言った。

 

大卒の女の子がこう返す。

 

『えりちゃん、大丈夫?

私のはお父さんに借りた車だから

代わってあげられないけど

キンちゃんは頼めば代わって

くれるんじゃない?』

 

キンちゃんは、快く交代を受け入れた。

 

えりちゃんは、キンちゃんの

車に乗り込むと、ブオンと

アクセルをふかして他の全員を

凍り付かせた。

 

。。。大丈夫かこいつ?。。。。

 

えりちゃんは窓を開け

皆に声をかけた。

 

『お~い、みんなぁ!行くよ~』

 

大卒の女の子が運転する車に

乗り込む4人と、えりちゃんが

運転する車に乗り込む3人の

表情の違いは、まるで死刑囚と

その執行官くらいの違いが

あっただろう。

 

ブオン!

 

ガシャン。

 

あああ。

 

えりちゃんが運転する車は

後ろに停めていた大卒の女の子の

お父さんから借りてきた車に

ぶつかってしまった。

 

『やだぁ。ごめ~ん』

 

『ああ、いいよいいよ。

そんなに傷もついてないし。』

 

心の大きな大卒の彼女は

年上であるという自覚からか

笑って許した。

 

『でも、運転はやっぱり

男子に代わってもらおうよ。』

 

この一言で、彼女は運転を

あきらめた。

 

凍り付いた空気が

みるみる溶けていくようだった。

 

私は大卒の女の子の

運転する車の助手席に

座り、運転する彼女の

横顔を見ていた。

 

『ねえ、ゆうちゃん、さっきの

本当に大丈夫と?』

 

『ん?大丈夫大丈夫。

お父さんは私に甘いから。』

 

『でもさ、もう俺たちは

社会人だからちゃんと

しようよ。そこは。けじめとして。』

 

『え~!いいよ~。

ヤマシタ君って意外とマジメだよね』

 

 

その日のドライブはそのあとは

特に、事件も起きず

楽しい一日を過ごすことが出来た。

 

 

私だけは少しだけもやもやしていた。

 

ツヅク

 

合掌

 

 

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