246発目 ステーキの話。


ライナーノーツ
成人式の後、みんなでご飯を

食べようということになった。

みんなとは、カンとチャンと

ヒロとハルヤンとシゲとコージだ。

 

式典が小倉南区役所であったので

近くにあったステーキを専門とする

ファミレスに行ったのだ。

 

『誰かここに来たことある?』

 

誰かがそう尋ねた。

 

しかし我々は全員が貧乏な

家の子供達だったので

ステーキ自体を食べたことがなかった。

 

『大丈夫か?箸はあるんか?』

『とりあえず腹も減ったし入ろう』

 

4人がけのボックスシート二箇所に

通される。

 

『ご注文が決まりましたら、そちらの

ベルでお呼び下さい。』

そう言って店員は立ち去った。

 

『オレにまかしとけ』

そうたくましく言い放ったのは

他でもないカンだった。

 

全員の注文をカンがまとめる。

『よし、店員を呼ぶぞ。』

そう言うとカンはテーブルに

備え付けられているベルに

向かって顔を近づけた。

そして小さな声で

『おい、店員。注文を取りに来い。』

と言った。

『カン、それ押すんやないんか?』

間違いを指摘されたカンは

顔を真っ赤にして

『分かっとる。ボケたんや!』

と言い訳した。

 

ぴんぽーん。

『ハイ、ただいま。』

すぐに店員が笑顔で近づいてくる。

カンが偉そうに全員分の

ステーキを注文した。

『それでは、お客様

焼き方はいかがなさいますか?』

 

一瞬、首をかしげたカンは

次の一言で我々と店員を

驚かせた。

 

『フライパンでじゅじゅーっと。』

 

カシコマリマシタ

 

合掌

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