208発目 彼女の話。


ライナーノーツ
彼女はもう動かない。

どんなに呼びかけても

彼女はもう動かない。

動かなくなった彼女の

閉じた瞼から

涙が落ちる。

2分前まで

はしゃいでいたのに

まるで違う世界に

紛れ込んだように

彼女はもう動かない。

私は彼女に手を差し伸べる。

その手を彼女がつかまないと

知っているのに。

どうして?と

私は尋ねる。

彼女が答えないのを

知っているのに。

ふと、彼女の口が動いた。

気がした。

私は最後の力を

振り絞って

彼女に懇願する。

動いてくれと

念じながら

彼女に、彼女だけを

見つめながら。

『いっちゃん、アイス買ってやるけん

自分で歩きなさい』

ダッコシテェ

合掌

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