689発目 あの人との再会の話。



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休み明けの月曜日は、首都圏を大寒波が襲い、一瞬にして街中を銀世界に変えるほどの雪が降り続けた。私が勤める会社の上層部も早々に判断を下し、16時にて終業とし全員に帰宅を促した。

 

私はオフィスの窓から横浜駅西口の道路を見下ろした。札幌にいた時に比べれば大したことのない積雪の量だったが、雪に慣れてない首都圏は4年前の教訓も活かせずに大混乱を招いていた。

 

4年前、私はまだ札幌に住んでいた。首都圏を襲った大寒波はテレビのニュースで知ったのだが、周りの北海道民は鼻で笑っていた。

 

「そりゃあ、あんな雪道を普通のタイヤで走ったら事故るよ。」

 

雪に慣れてない人々が「これくらいなら大丈夫」と根拠のない自信を振りかざして車で出かけた結果、数百件もの自動車事故が起きたのである。

 

そして今回も、街のいたるところで自動車事故が起きていた。ニュースによると横浜市では路線バスが電柱にぶつかり、あやうく大惨事になるところだったらしい。なぜ、「車を停めて動かさない」という単純な判断ができないのか不思議でならない。

 

17時になり私は帰宅の途に着いた。いつも使っている地下鉄の駅はそれほどの混乱もなく、遅延も運休もなかった。人の込み具合は普段より少し多め、といった程度だ。

 

目の前にその男を発見したのは僥倖といえた。彼を見かけなくなって1年くらいが経過していたからだ。

 

一年前、その男は突如現れた。いや、現れたという表現は間違っているな。見つけた。そう発見したという方がしっくりくる。

 

朝の通勤電車で横浜駅で降りる人ごみの中に、ひときわ異彩を放つ”彼”を発見したのだ。私が転勤してきて半年が過ぎようとした頃の話だ。

 

10月に入り、日中は暖かいが朝晩は冷える日が続いていた。だが彼だけは半そでのワイシャツ姿で颯爽と歩いていた。買ったばかりと思しき折り目が入ったままのワイシャツだった。夏に彼を発見できなかったのは周りも全員が半そでだったからだろう。

 

クールビズ期間も終わり周りが上着を着用しだしたことで”彼”の半そで姿は浮きに浮いていた。

 

そして11月になっても12月になっても”彼”の半そで姿は変化なしだった。

 

年が明けて寒い日が続き、箱根の国道1号線が雪のため通行止めとかいう冬らしいニュースがあった日の朝も”彼”は半そで通勤を続けていた。

 

やがて春を迎え、5月のゴールデンウィークが終わったころ、彼を見かけなくなっていた。

 

朝のルーティンのように眺めていた折り目の付いた半そでワイシャツにお目にかかれないことは少なからず私の心に小さな穴を開けた、などとセンチメンタルな気持ちにはならない。「変な奴をみなくなった」程度の変化だ。

 

夏が過ぎ秋が訪れ、そして今年もまた冬がやって来た。”彼”を見なくなったこともすっかり記憶から抜け落ちた日常が続いていた。

 

そしてこの記念すべき大寒波の日に、しかも帰宅時に”彼”に再会するなんて!

 

もう二度と”彼”を失いたくない!そう思った私は思い切って彼に話しかけようと思ったが、なかなかその勇気は出なかった。

 

もし、”彼”が見た目通りの変な奴で、話しかけた瞬間におかしなことになっても面倒だしな。

 

救世主が現れたのはその直後だった。

 

「マスダさん、今帰りですか?」

 

”彼”に近寄って来た男性が話しかけた。

 

「相変わらず薄着ですね~」

 

おいおい、薄着って言うレベルじゃないぞ。

 

「でもさすがに今日は寒いんじゃないですか?」

 

マスダさんはただ笑うだけで何も言わない。とてもシャイな人なんだな。

 

「あ、でもあれか。マスダさんジャケット持ってないんですよね?もしかしてコートも?」

 

も、持ってない?社会人なのに?上着を持ってない?

 

「コートももちろん持ってません。洋服は全て半そでです。」

 

マスダさんは消え入りそうな小さな声で答えた。そしてこう続けた。

 

「背中にカイロ貼ってるから大丈夫っす」

 

 

・・・・・・・・・・・?

 

寒いんかい!

 

ナゾハ、フカマルバカリ

 

合掌



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