430発目 酔う話。



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さとう





ニードルハビットという言葉を

ご存知だろうか?

 

この言葉は正式な言葉ではない。

いわゆる ”隠語” だ。

 

麻薬中毒の人が、薬を買うお金がなくて

注射針を刺すことで、麻薬を打った気分に

なれるらしい。

そこまで行くと、引き返すことが出来ない

くらいの重度の中毒だということだ。

 

場合によっては蕎麦湯を打ったり

することもあるらしい。

 

 

 

私が就職したての頃、

独身寮に住んでいたのだが

私と相部屋のホリ肉さんを

尋ねて、しょっちゅう部屋に来る

左党さんという人がいた。

 

彼はホリ肉さんのいくつか先輩で

ホリ肉さんが営業で取って来た

物件の工事を担当している人だった。

 

生まれ故郷が東北のどこかで

とにかく日本酒を好む人だった。

 

部屋に来るときは、いつもベロンベロンに

酔っ払ってて、必ず脇に一升瓶を

抱えて部屋に入ってくる。

 

『おふかれ~』

 

とニコニコしながら呂律が廻ってない。

 

とても性格が良く、優しい先輩で

酔っ払っていることを除けば

紳士と呼べる人だった。

 

毎回、朝の3時くらいまで飲んで

リノリウムの床に寝てしまう。

そのたびにホリ肉さんは自分の毛布を

かけてあげ、ようやく自分も眠りにつく。

 

あるとき、左党さんが部屋に大事な

お酒を忘れていった。

ホリ肉さんの携帯電話に何度も

電話をかけてきては、

 

『あるかな?あるかな?』

 

とか

 

『なくなってないかな?』

 

とか

 

『仕事が終わったらすぐに

取りに行くから部屋にいてね』

 

とか、とにかく心配していた。

 

まるで迷子になった我が子を

心配する母親のようだった。

 

 

その日の夜7時ごろに部屋にいた私は

一人でテレビを観ていた。

 

テレビでは、ある杜氏がこう言っていた。

『絶対に二日酔いにはなりません。

なぜなら酒と同じ量の水を飲むからです。』

と。

 

味見のときにたくさん、それも毎日

お酒を飲んでいるのに二日酔いには

ならないのですか?という質問に対する

回答だった。

 

なるほどね。

 

感心していると部屋のドアが開き

左党さんが入ってきた。

 

左党さんは一升瓶を見つけると

心底、ホッとした表情で

 

『いやあ、心配で心配で

今日は一日中、手が震えてたよ。』

 

と言った。

 

左党さん。

 

それはいわゆる

 

アル中ってヤツですよ。

 

と言いたいが堪えた。

 

『ホリ肉ちゃんにもお礼を言わなきゃ』

 

と、それから数時間後に帰ってくる

ホリ肉さんのことをお酒を飲みながら

待っていた。

 

私も勧められたが、日本酒は飲めないと

言って断った。

 

そこからの数時間は見事だった。

 

普通の人が、いやアル中でシラフの人が

猛スピードで酔って行くのを見せられた。

 

『ヤマちゃんは、福岡の出身だろ?』

 

という質問を15分の間に20回された。

 

つまり

『ええ、福岡です。』

と20回答えたことになる。

 

21回目には面倒になったので

『ヤマちゃん』

の時点で

『福岡です。』

と答えた。

 

1時間くらい経つと大事なお酒が

底をついた。

私は空き瓶を預かると、

『新しいのを買ってきますよ。』

と右手を差し出した。

 

『いやあ、かれがないんらよれ』

 

金が無いのか。

 

じゃあ、今日はボクが出しときます。

あとで返してくださいね、と言い

私は空き瓶を片手に食堂に降りた。

 

食堂で料理酒を見つけた私は

それを空き瓶に移しもう一度

部屋に戻った。

 

驚いたことに左党さんは

それをグビグビと飲み干し

 

『いらぁ、もうふぁくふぁっちゃった』

 

と更に酔っ払って私に瓶を差し出した。

 

私は今度は食堂で瓶の中に

水を入れ、お酢を少したらした。

 

それを持って上がる途中で

ホリ肉さんが帰ってきた。

 

『あ、ヤマシタ、左党さんは?』

 

『ベロンベロンに酔っ払って

コレが3本目です。』

 

と私は右手に持つ瓶を見せる。

 

『しょうがねぇな、あの人は。

それいくらだった?どうせ

あの人、金持ってなかったろ?』

 

私は少し悩んでから、1,000円ですと

答えた。

ホリ肉さんは自分の財布から千円札を

抜き取りそれを私にくれた。

 

多少の罪悪感はあった。

なにしろ中身は水とお酢が数滴だ。

 

部屋に戻ると左党さんは、大声で

歌っていた。

 

一升瓶を見ると腹をすかした犬のように

四つんばいで擦り寄ってきて

奪うように酒を取ると、湯飲みになみなみと注ぎ

飲み始めた。

 

驚いたのはそこからだった。

 

湯飲みに注いだら、まるで水のように

いや、実際それは水だったのだが

グイグイと飲み干し、さっきより更に

酔っ払ってきたのだ。

 

『おふぁけふぁうまいれぇ~』

 

『左党さん、明日早いんでしょ。

もうそれくらいにして帰りましょ?』

 

ホリ肉さんは左党さんを抱える。

 

『いや、これ酔っ払ってっから

重てぇなぁ。よいしょ』

 

左党さんは瓶を離さない。

 

『うええ、きぶんふぁふぁるくなっらぁ』

 

もう何を言ってるのか分からない。

 

最終的に左党さんはお酒を5合くらいと

料理酒を1升、そして水を1升飲んで

床の上にゲロを吐き、帰っていった。

 

いや。

 

すごいな。

 

水でも酔っ払えるのか。

 

このことを私は

『ドリンクハビット』

と呼ぶことにしている。

 

翌朝、朝礼で会った左党さんは

私に近づきこう言った。

 

『何年ぶりかで二日酔いじゃないよ。』

 

そりゃ、あんた、あれだけ水飲めば

二日酔いにはならんよ。

杜氏が言ってたよ。

 

ふと手を見ると小刻みに震えていた。

 

元気かなぁ。

 

サトウサン

 

合掌

 

ホリ肉さんについてはこちら↓
385発目 通じない話。

 

 



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