コンピューターを購入する際の
決め手となるものの一つに
CPUの大きさというか、数値みたいな
ものを参考にすることがあると思う。
CPUとは Central Processing Unit
の略で中央演算処理能力の事だ。
つまり1クロックあたりにどれだけの
命令を処理できるかが数値で表されている。
このCPUのメーカーで最も有名なのは
Intel (インテル) ではないだろうか?
『インテル、入ってる?』
というキャッチフレーズは記憶に新しいだろう?
私がよく行く居酒屋に、このCPUが
世界一小さい男がいた。
一つの命令に対し処理できるスピードが
地上の生物で最も遅いと思う。
おそらく、そこらへんの水族館の
イルカの方が賢いだろう。
注文もろくに取れず、客の言ってることの
8割以上は理解できておらず、
彼の解雇も時間の問題だなと
我々は思っていた。
そんなCPU最小男にも悩みはあって
聞いてくれというから仕方なく
耳を傾けた。
『僕は鼻が低いのがコンプレックスなんです。』
え~っと。
つまり君は。
その愚かでのろまな処理能力しかない
脳みそよりも低い鼻の方が問題なのかい?
『結構、いろんな人に言われるんスよ。』
ほほう。
すると何かい?
君の周囲の人たちは
その愚かでのろまな処理能力しかない
脳みそについては面と向かって
指摘しないだけのデリカシーさを
持ち合わせてるのかい?
そうだろう、そうだろう。
きっとそうだろう。
『で、昨日から通ってるんですよ。』
突然、神妙な面持ちから表情を
変え、笑顔になり私を見つめた。
『通ってるってどこに?』
『決まってるじゃないスか。
スーパー銭湯っスよ~。』
では問題です。
あるところに鼻の低い男がいました。
鼻の低い男はその低い鼻をなんとか
しようと思いスーパー銭湯に通う事に
しました。
その事を打ち明けられた青年は
次のどの行動をとったでしょう?
①『お前はバカか?』と言った。
②あきれて何も言えなかった。
③どうにか会話を続けた。
正解は③。
『ちょっと、理解できないんだけど。
鼻が低いとスーパー銭湯に行くと?』
『ああ、ヤマシタさん、僕が行ってる
銭湯はアメリカ人が多いんですよ。』
『ほう。で?』
『いや、だから。
ほら、出てるじゃないっスか?』
『何が?』
『も~う。アメリカ人って
鼻が高いでしょ?そのエキスが
っスよ。』
どうだ、こいつのCPU。
その日は店長が彼を呼んで
同じお客さんのところで止まるな。
もっと動けといった注意をしていたので
それ以上彼とは話せなかった。
数日が経ち、スーパー銭湯の
エキスの事など忘れていた私に
彼はまたも近づいてきて、
話しかけた。
ま、そんなにお客さんもいない時間だし
私も丁度、追加で注文しようと
思っていたから相槌を打った。
『いやあ、銭湯はダメっすね。
今度はプールにしました。』
一瞬、何のことか分からなかったが
ほどなく、ああ、鼻が高くなるエキスか
と思い当たった。
いい加減、私も相手をするのが
面倒になったので、ここらで
反撃すべきだと決断した。
『君はさ、見た目じゃなくて
中身をもっとさ、磨くというか・・』
すると彼は間髪入れずに
私にこう言ってきた。
『ああ、ボクこう見えて
結構、インテルっスよ。』
もうね。
耳を疑う暇すらなかったよ。
なんつうか、
脱力感というか、虚無感というか。
インテリとインテルを間違うのに
もっともふさわしい男だな。
8ビットノオトコ
合掌