157発目 癖の強い運転手の話


ライナーノーツ

ほんのちょっとの油断が遅刻につながる。

以前なら、支店長に電話して
『すんまっしぇ~ん、ちょっと遅れま~す』
と言ってただろう。
しかし、今は私がその支店長の立場だ。
絶対に遅刻するわけにはいかない。

電車に乗り遅れた私は
乗り換えの駅までタクシーで行こうと
決断した。
駅前ロータリーに個人タクシーの看板が
貼ってある。
早速電話して一台寄越してもらう。

1分ほどで到着したタクシーに乗り込む。
行き先は?と聞かれたので
千早駅までと答える。

100メーターほど走った後、
運転手が『あっ!』と叫んだ。

『すいません、メーター上げるの
忘れてました。』
と言ってメーターを上げる。
こちらはちっとも困らないけどね。

『ご乗車ありがとうございます。』

え?このタイミングで?

おそらくメーターを上げると
自然に出てくる言葉なのだろう。
いわゆるルーティーンだ。

おしゃべり好きの運転手は
その後も色々話しかけてきた。

”今日は雨ですね。ハイ。タクシーにハイ
乗るときはハイ、傘をどちらに置くか
ハイご存知ですか?”

『左側ですよね?忘れないように』

”ハイ、よくご存知ですねハイ”

”お客様、お下りの際はハイ
必ずハイ領収書をハイもらっておいて
ハイ下さいね。ハイこれ大事ですよ
ハイ忘れ物したときにハイ
問い合わせハイしやすいですからハイ~!”

なんだか”ハイ”のタイミングがおかしすぎて
話の内容が全然入ってこない。
でもそうかたしかに領収書はもらったほうが
よさそうだな。

程なく駅に着く。

料金を払う。

運転手はおつりを寄越しながら
ドアを開ける。

”ありがとうございました。”

おい。
領収書は!

クセガツヨスギル

合掌

“157発目 癖の強い運転手の話” への1件の返信

  1. アハハハ……(笑)念押ししときながら忘れるって~…(笑)

    ナイスな運転手だな。
    運転手でも話すのが好きな人もいれば、無言な人もいるよね。
    舌打ちばかり小言しか言わないムカつく人もいるし。

    タクシーに乗ったら当たりハズレあるような気がする……(笑)

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