137発目 自由を奪われる男の話 その後


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昨年の10月24日。『112発目 自由を奪われる話』
で紹介した男、名前を『ノブ』という。

彼が溝に閉じ込められる数ヵ月前、
季節は夏真っ盛りで中学生の
思い出作りとしては最後の夏休みだった。

地元の農業用貯水池で、私の自宅から
ほど近いところに『もみの粉池』という
池がある。

誰かが持ち込んだブラックバスを
釣りを楽しむ人々が訪れるような
汚い池だ。

夏休み初日のその日、
我々は仲間内8人が集まって
その池に向かった。

釣りをするためだ。

あろうことか誰一人として
釣り道具を持ってきていない。
どうすんだよ!と憤るヤツもいた。

じゃあこうしよう、と提案をしてきたのは
ノブだった。

2チームに分かれて、競争するんだ。
で、負けたほうが買ったほうに
アイスをおごる。簡単だろ?

それは良い提案だと
全員が乗り気になる。

AチームとBチームだ。

で?競争とは一体、どうゆう競技だい?

ノブは説明を続ける。

池の真ん中に人が一人立てるくらいの
島があるだろ。あそこまで
泳いでいって、この岸まで帰ってくる。
水泳のリレーみたいなもんだ。
簡単だろ?

それは良い競技だと
全員が乗り気になる。

でも、ノブ以外の7人の本音は
”こんな汚い池で泳ぐかよ” だった。

一応チーム分けをする。
Aチームの先頭はノブだ。
Bチームのほうはシゲという優男だ。

『オレは泳ぎが得意なんだ
別名は玄海のトビウオだ』
とノブは豪語する。

初めて聞く内容であったが
そうかそうかと受け流す。

第一泳者のノブが飛び込む。
Bチームのシゲは飛び込まない。

ノブはシゲが飛び込まなかったことに
気づかずにバッシャバッシャと
島に向かって泳いでいく。

程なく島に着いたノブは
その島の上に立ち上がり
こちらを向き、自分ひとりだけが
泳いでいたことに気づく。

『おおい、シゲ、何しよるんか!』

その姿を岸にいる我々7人は
指をさして笑っている。

ノブは自分だけが嵌められたことに
気づいて島の上で怒り狂う。

と、そのとき。
島の周りに無数の蛇が
集まってきた。

全ての蛇が鎌首を上げ
敵意をむき出しにしている。

どうするノブ。

我々はノブをその場に残し
帰宅の途についた。

夕方の7時過ぎに自宅の電話が鳴る。
母親がノブから電話よと
受話器をよこす。

私は電話を代わり受話器に応える。
『おお、ノブ。無事やったか?』

『40箇所くらい噛まれたわボケ
青大将やけよかったけど
マムシやったら死んどるぞ』

確かに。

結局そのあと我々7人は
近くのお好み焼き屋に呼び出され
駐車場に正座させられて
小一時間説教されたあと
アイスをおごらされた。

数週間後、別の用事で
ノブの家に遊びに行ったら
リビングに蛇の剥製が
飾られてあった。

ワロタ

合掌

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