123発目 その人の過去の話。


舞台IMG_1606

関東にいた頃のことだ。
六本木の交差点から芋洗い坂とかいう
坂を下って少し行ったところの左側に
1階に花屋の入ったビルがあった。

そのビルの地下にあるクラブの経営者から
女の子を募集しているという話を聞いた。
『君は知り合いが多そうだから、紹介してよ』
と頼まれた私は、快く引き受けた。

たまたま、失業したての女の子が
アルバイト先を探していたので
話を持ちかけたら興味があるとのこと。
早速社長に電話し、面接の段取りをつけた。

数週間後、社長から電話があり
あの子はヒットだったよ、と喜んでいた。
どうやら、入店後すぐに指名を取り
あの子目当てのお客さんで連日、
にぎわってるとのこと。
『お礼がしたい』とそのお店に招待された。

ただで良いと言われたものの、
手ぶらでいくのも気がひけたので
そのビルの1階の花屋で、手土産を
買うことにした。

そんなに広くない店内は、六本木らしく
蘭や、鉢植えなどの高級そうな
ラインナップだ。

黄色いエプロンをした店員さんが
いらっしゃいませと近づいてくる。
私が驚いたのはその店員さんの風貌だ。

パンチパーマで、眉毛はそり落としており
ドスの効いた低い声で、もしかして
あなたは、暴力を生業とする職業の方では?
と疑いたくなる人だった。

人当たりや物腰は柔らかなのだが
どうにも威圧的な感じを受ける。

『コレなんかどうスか?』と
3万円もする胡蝶蘭を勧めてきた。
断ると、ぶっ飛ばされるんじゃ?と
懐疑的になり、素直にソレを購入した。

地階に下りて入店すると
しばらくして社長がやってきた。
『いやあ、今日はお金のことを気にせず
楽しんで行ってね』とご機嫌だ。

いえ、社長。すでに3万円やられました。
とは、言えなかったが、差し出した胡蝶蘭に
社長は一層笑みを浮かべ、ホントにありがとう
と奥へ引っ込んでいった。

小一時間楽しんだ私は、更にボトルを3本も
プレゼントしてもらい、有意義な夜を過ごした。
紹介した女の子も、とても楽しそうだった。

店を出て、花屋の前を通り過ぎようとしたら
先ほどの店員が、
『喜んでもらえましたか』と
話しかけてくる。
『おかげさまで、ありがとう』と返すと
『よければお名前を頂戴できますか』と
言って来るではないか。

いえいえ、名乗るほどのもではございません。

この一言がいえない私は本当に根性無しだ。
正直に告白すると私はこのとき
かなりビビッていたのだ。

『ヤマシタです。』

じゃあ、ヤマシタさんまた今度。
と手を振る店員さんは、Kと名乗った。

私はこの時点で、Kさんと
あんな事件に巻き込まれるとは
想像すらしてなかった。

ツヅク

合掌

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