120発目 クレーム処理のために持参する手土産の話。


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私のような仕事をしていると

普通の人には想像がつかないくらいの

クレームに直面することが多々ある。

 

完全な言いがかりの場合もあるし

こちらのミスで全面降伏するケースもある。

 

 

とある取引先から担当者の対応が

悪いとご指摘を受けた。

 

総責任者である私は早速、担当者の

直属の上司を連れて謝罪に行くことに

した。

 

その時の担当直属上司は私の先輩で

気心の知れた人だった。

 

『すまんな、支店長。

俺の部下が迷惑をかけて』

 

心底すまなそうにしていた。

 

行く途中で、彼が思い出したように

 

『手ぶらじゃまずいか?

こういう時は菓子折りとか

ケーキとか持って行った方が

いいんじゃないか?』

 

と提案してきた。

 

ちょうど私も同じことを考えていたので

行く途中でみつけた洋菓子店に

立ち寄ることにした。

 

店内にはひらひらの付いた

エプロンをした若い女性店員が

満面の笑みで待ち構えている。

 

『いらっしゃいませ』

 

我々は二人は完全に場違いだった。

 

恥ずかしさをこらえつつ

ショーケースに近づき

腰をかがめて品定めをした。

そしてケースの向こう側にいる

ひらひらエプロンの可愛い店員さんに

商品を指をさしながら注文した。

 

『これとこれ。

 

あっ、違う違う

 

こっちのヤツ』

 

ところがうまく伝わらない。

 

ひらひらエプロンの可愛い

店員さんが業を煮やして彼に言った。

 

『名前を言ってくださいますか?』

 

 

彼は前傾姿勢から

むくっと起き上がり

はっきりとした声でこう答えた。

 

『シバタです。』

 

面食らったような顔をした

女性店員に笑顔を送り

私は彼の耳元に近づき

そっとささやいた。

 

『シバタ先輩、そんな名前のケーキは

ありませんよ。』

 

ショウヒンメイヲイエ

※注 文中に出てくる人物が架空の人物かどうかは個人の判断に委ねます。

合掌

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