「好きと言うよりは、嫌いじゃないという程度です。」
という風に本来なら「〇〇と言うよりは〇〇」という使い方をしていた。前の言葉を後ろの言葉に置き換えるときに使用する言葉だ。
それがやがて時代の変遷とともに「〇〇ってゆうか」という言葉に変わり、とうとう「てゆうか」と最初に〇〇すらつかなくなった。
もちろん、言葉というものは生き物のように時代とともに成長(もしくは衰退)していくのは世の常で、私はそのことに対して否定的になったり、卑下したりする気持ちもない。
だから、帰宅した夫に、倦怠期を迎えた妻が、「おかえりなさい」も言わずに
「てゆうか、足がクサイんですけど」
と言ったとしても
「何という言葉をクサイに置き換えたのですか?」などと無粋なことも言わない。
仕事の帰りに、革靴の中で蒸れる足の裏を思いながら、コンビニエンスストアに立ち寄って、久しぶりに週刊漫画を立ち読みしてみた。
これと言って気になる作品があったわけではないが、TVでザッピングするかの如く、パラパラとページを捲ると、とあるページのセリフが気になった。
主人公の男の子が恋人の女の子に対して、こう言うのだ。
「つかさ、これ何?」
『つかさ?』
相手の女の子の名前が「つかさ」ではない。私が知らない間に「てゆうか」が「つかさ」になっていたのだ。はっきりと思い出せないが「てゆうか」に変化していたことに気がついたのは、何年も前の話ではない。ほんの4~5年くらいの出来事ではないか?
つまりたった4~5年の間に「てゆうか」が「つかさ」に変わったのか?
なんて目まぐるしい変化だ!
夏休みが終わって2学期の始業式に金髪でやってきたコウタロウを思い出した。その急な変化に戸惑い以外の感情が湧かなかった。それと同じだ。
ざっと自分の記憶を探ってみるが、私の周囲で「つかさ」を言ってる人を見たことはない。
漫画の中だけの出来事だろうか?
「ヨンヨンマルマルワンワンワン、ツカサのウィークリーマンション」
「つかさ」と聞いてあのCMを思い出した昭和生まれのオッサンたちよ。お前らの知らないうちに「つかさ」はウィークリーマンションじゃなくて、男の子が女の子に「これ何?」って聞くときの接頭語になったんだぞ。
アシタカラツカオーット
合掌