本屋の店頭に「店員がおすすめする1冊」というコーナーがあり、そこにこの本が積まれていた。いや、祀られてたと言いかえても良いくらい、この作品は恭しく扱われていた。
表紙に字がびっしりと書いてあるから、手に取って読んで見ると、なんとそれは表紙ではなく、表紙と同じサイズの帯だったのだ。
通常の帯だと伝えたいことが書ききれないそうなのだ。
だが書いてあるほとんどが、この本を絶賛した評で 「とにかく一気に読みました。」 だとか 「驚愕のラストに身震いしました。」という陳腐なワードが連ねてある。
大体からして物事を斜めからしか見ない私は、それらを丁寧にひとつづつ読んでから、こうつぶやいた。
「信用できん。」
あまりにも賛辞だけを並べられると逆に嘘っぽく見えるというか、巧妙な罠のような気がしてしまうものだ。
「いやあ、あなたは美人で気立ても良くて収入も高いし、会社での地位も名声も手に入れ、なおかつ年齢を感じさせないほどの美しい肌、そして日本人であることが誇りに思えてくるほどの輝いた黒髪!あなたのことを非の打ちどころのない人間って言うのでしょうね。」
って言われて喜ぶ女性がいますか? いないでしょう。
美辞麗句は時として存在を否定する言葉の凶器だ(by ヤマシタサトル)
「でも結局、買って読んだんでしょ?」
ええ、買いましたよ。そして読みましたよ。
結論から言いましょうか?
まず、一気読みはしなかった。それほど続きが気になりもしなかった。二日ほどかけて簡単に読めた。目を惹くような表現もなければ知らない単語も出てこなかった。そして迎えたラストシーン。
多くの人が「驚愕の!」と褒めたたえたラストは、確かに予想もしないラストだった。というか、ある程度先の展開を予測しながら読んでいたのに、それは途中で何度も裏切られた。
詳しくは書けない。ネタバレになってしまうから。
ただ、これだけは言っておこう。 読み終わった後に、もう一度読みたくなるぞ。アラをさがすために。
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