昼食を摂ろうと中華料理店に入った。 ホイコーロー定食が650円って魅力だろ? 初めての街だから食べログとか口コミとかどうでも良くて、量と値段で決めるべきじゃないのか?
店頭で出迎えてくれたのは中国人だったよ。 「イラシャイハセ」 って片言だったし。 で、「イチメイサマデスカー」って聞くから 「はい」 ってすげなく答えて店内に通してもらったらさ、ガラガラなわけ。
大丈夫か?昼飯時のこの時間にこの客の入りって。 って思ったよ。 でももう引っ込みつかないし、座るよね、一応。
ざっと見回したらオレの他に6組の客がいたよ。 おばさんの3人組、ランとスーとミキだな。 そして学生の二人組、それから作業着を着たオッサンが一人ずつ3組。 そしてバカっぽいカップルが1組。
バカっぽいカップルはさ、ハイボールとか頼んでんの、昼間っから。 ちょうど昨日の夜に観たテレビで詐欺師を追い込む特集やっててさ、結婚詐欺ね。 その詐欺師は結婚願望の強い女からお金を騙し取ってその金で昼間っから焼肉屋でビール飲んで、パチンコやってって遊んでばかりなの。
だからさ、オレも「こいつら結婚詐欺か?」って思ったんだ。 オレと同じホイコーロー食ってるし。
暑かったよ、今日は。特に。 だからオレだって飲みてえよ! キンキンに冷えたビール持って来~い!って言いたかったけどさ、車だもん。 我慢した。 だってオレ結婚詐欺師じゃねえし。
中国人の店員が近づいて来てさ、「ご注文はお決まりですか?」って聞くから 「さっきホイコーロー定食って言ったよね?」 って言ったんだ。 そしたら 「あ、ありがとうございます。」 って完全に間違ったリアクションしてさ。ま、いいか中国人だし、って思ってたの。
何だよ!この店。 店員はマゴついてるし、結婚詐欺師が昼真っからハイボール飲んでるし、って思ってたんだ。 ま、あいつらが結婚詐欺師かどうか分かんねぇけど。
「ホイコーロー定食、おまちどうさま」
おお。来た来た。 お!中々うまいやん。 あれ? もう帰るのか? 詐欺師カップルが席を立ったぞ。 どうせお前ら、結婚願望の強い女から巻き上げた金でパチンコ行くんだろ?ま、あいつらが結婚詐欺師かどうか分かんねぇけど。 あれ? また座った。 何だよ! ややこしいな。 ま、別に良いけど。
おっと、その前に作業着のオッサンが席を立ったぞ。 あ、レジに行った。
「え~?何でよ! オレ、ホイコーロー定食だよ!」
オッサンが文句言ってる。 あら、オレと同じヤツ頼んでたのね。 どしたどした?
「何だよ!12,000円って!」
すみません、すみませんって謝ってる。
「皆様、もうしわけございません。伝票が間違ってます。」
全員が一斉に自分の伝票を見出した。 俺も見た。
『アイスコーヒー 450円』
ああ、間違ってる! いい方向に間違ってる。どうする?オレ?自首する?
バカップルがクスク笑ってるなぁ。 詐欺行為がうまく行ったんか? あら、詐欺師が立ち上がったぞ。
「店員さ~ん、俺らの伝票さあ、ホイコーロー定食になってるよ。その人の伝票と俺らのを取り違えたんじゃねえの?」
「あああ、すみません。」
おろ? お前さっきホイコーロー食ってなかったっけ? それとも何か? これも詐欺行為の一環か?
「皆様お騒がせしました」
ん?一件落着したの?
あれれ?
オレのこのアイスコーヒーの伝票って誰のだろう? ってゆうか詐欺師が持ってる伝票がオレのじゃねえの?
????
あ、そろそろ時間だ。行かなきゃ。
「ありがとうございました。お会計450円でございます。」
「え?いいの?」
「はい。消費税込みでございます。」
いや、そうゆう意味じゃなくて・・・
モウケタ
合掌