412発目 小さな運を使い果たす話。


4億円

運や不運というものは

根拠も何もなく、ただ

オカルトの要素だけで

構成されている。

 

だが、悲しいかな我々人間は

とかく運を大小で判断する。

 

大きな運を手に入れるには

小さなたくさんの運を手放す。

 

グロスでは同じなのに

小さな運をつかむことで

逆に大きな運を逃すと

思いこんでいる。

 

 

偉そうに言ってはいるが

かくいう私もその一人だ。

 

いや、むしろ率先して運を

大小で判断していたんだ。

 

そもそも大きな運なんて

最初っから持ってなかったのに・・

 

 

数週間前から続いていた

キャリーオーバーはその日、

とうとう1等賞金が4億円に達した。

 

ロトくじの話だ。

 

もし私の選んだ数字が7つとも

ぴたりと合えば4億円は

私のものになる。

 

慎重かつ大胆に

それでいて直感のみで

7つの数字を選ぶ。

 

購入から二日後が

当選発表だ。

午後に抽選が行われる。

おそらく私が億万長者になるのは

その日の午後3時ごろでは

ないだろうか?

 

子供たちが寝静まったリビングで

ノートを広げ万年筆のキャップを

取り外す。

 

4億円の使い道を書く。

 

①住宅ローンの一括返済

②海外メーカーのSUV(車)

③テント

④新しいノートパソコン

⑤GOPRO(ビデオカメラ)

 

もう出てこない。

欲しいものはこれくらいだ。

つまり私に物欲はないのか?

 

これだとかなり余るぞ。

 

では、余ったお金ですべきことは?

 

自分自身に問う。

 

答えは簡単だ。

 

『殖産』

 

つまり収益を生むものを

購入すればよい。

人はそれを投資と呼ぶ。

 

よし、賃貸マンションを買おう。

利回り8~10%のものがいいな。

物件を探すのはお手の物だ。

なにしろ私はその道のプロだ。

 

は~。

 

楽しみで眠れなくなっちゃうよ。

 

翌日も一日無事に過ごした。

 

そして当選発表当日。

 

午前中はアポがあり

出かけることになった。

客先で用事を済まし

さあ、事務所に戻ろうと

停めていた車に乗り込む。

 

ふとスピードメーターに

目をやる。

 

ODDメーターが現在の

走行距離を示している。

 

『22222』

 

嘘だろ?ピタリ並んでる!

 

なんだか縁起がいいな、

という思いをすぐに打ち消した。

 

『こ、これは小さな運ではないか?』

 

嫌だ。

こんな車のメーターの2並びで

4億が手に入れられないのは

絶対嫌だ。

どうしよう。

見なかったことにするか?

 

私はすぐにエンジンをかけ

車を少し進めてメーターを

『22223』

にした。

 

何の解決にもならないのに。

 

気を取り直して事務所に戻る。

 

メールのチェックをするため

PCの電源を入れる。

右下のステイタスバーに

現在の時刻が表示されている。

 

『11:11』

 

くっ!

 

何故だ?

 

何故、今日に限って!

 

見なかったことにしよう。

 

私はメールのチェックもせずに

すぐにログアウトした。

 

大きく深呼吸する。

 

ちょっとナーバスに

なりすぎかな?と反省する。

 

気持ちを切り替えるため

外の空気を吸いに行こう。

ついでに昼飯も食べよう。

 

私は事務員に昼食のため

外出する旨を伝えると

事務所の近くのコンビニへ

足を運んだ。

 

パンをいくつかとコーヒーを

購入しレジに並ぶ。

 

『お会計は939円です。』

 

私は財布から千円札を1枚と

50円玉を差し出す。

 

『千と50円、お預かりしま~す。』

 

店員の間延びした言い方が

妙にむかつくが今日は許す。

なにしろ私はもうすぐ4億を

手に入れるんだ。

 

『それでは111円のお返しです。』

 

何っっっ!

 

くっそ!ここでも数字が

並ぶのか!

 

『レシートは結構です。』

 

と言い捨て事務所に戻る。

 

スマートホンのブラウザを

立ち上げ検索窓に

『宝くじ 当選番号』

と打ち込む。

 

私の購入したロトくじの

当選番号が羅列された

サイトが表示された。

 

7つの数字が合えば4億!

 

ひとつずつ慎重に確認する。

 

7つとも外れていた。

 

トウゼンナノカ

 

合掌

 

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