302発目 有名人?の話。


ぶるうたす

大学を卒業し就職が決まった。

 

配属先は埼玉県大宮市だ。

 

東京に行ける!

と思ってたのに。おしい。

 

でも埼玉って東京の隣だろ?

大宮っていうくらいだから

デカイ街なんじゃねえの?

 

調べてみよう。

 

ほほう。東京までは

京浜東北線で1本か。

おっ、池袋まで埼京線で1本だ。

 

渋谷は?渋谷?

 

ああ、乗換えが必要なのね?

 

じゃ、新宿は?

おっ!埼京線で1本!

 

埼京線ってすごいね!

 

芸能人に会えるかな?

 

渋谷とか六本木に行けば

会えるんやない?

 

ああ、誰に会いたい?

 

やっぱ大物?

 

中山美穂とか?

 

いいねぇ。

 

 

と、言う事で早速同期入社の

やつらと六本木を目指した。

 

あまりにも洒落たバーなどは

気後れするし、方言丸出しで

田舎者扱いされると腹が立つので

居酒屋に向かう。

 

おい、芸能人がこんな居酒屋に

来るんか?

 

大丈夫よ、あそこにサインが

飾ってあるやん。

 

おお、そうやな。

 

どきどきは最高潮に達している。

 

結局その居酒屋には

芸能人は現れず、あきらめて

場所を変えることにした。

 

よし、ここは背伸びして

ショットバーに行こう。

 

1件目はドレスコードがある店で

我々の格好だと失格だった。

 

2件目のバーは落ち着いた

ジャズの流れるバーだった。

 

これはいい感じだな。

 

タモリとか来るんやない?

 

いいねぇ。

 

で、2時間ねばってみたが

誰も現れず。

 

なんだよ、東京!

 

ああ、しかし終電の時間が

近づいてきた。

 

福岡と違って自宅に帰るのに

タクシーなんか使ってたら

とんでもない目に会うぞ。

県をまたいでるからな。

 

しょうがない。

 

帰るか。

 

帰りの電車は赤羽で乗換えだ。

 

乗り換えの電車を赤羽駅の

ホームで待ってると

筋肉ムキムキの男が

私たちの後ろに立った。

 

『あ~~~~!』

 

私は思わず大きな声を出してしまった。

 

同期のヤツは、誰?誰?

とうるさい。

 

『あの~?もしかして?』

 

『あ、そうです。よく分かりましたね。

最近はテレビには出てないんですが。』

 

あ~やっと会えた。芸能人。

 

ホームに来た電車に乗り込むと

芸能人も乗って来た。

 

『電車で移動なんですね?』

 

『今日は赤羽公民館で

ライブの後、知り合いの

ちゃんこ鍋屋で営業だったんで

車は置いてきたんです。

飲酒運転でつかまったら

洒落になりませんからね。』

 

ああ、なんて気さくな人だ。

 

私はその場で、失礼ですがと

前置きしてサインをねだった。

 

彼は快く私のTシャツに

サインをしてくれた。

 

板橋で電車を降りた彼に

手を振りながら

がんばってくださいと

激励もした。

 

再び、電車が動き出し

同期のヤツが私に尋ねてくる。

 

『ねえ、誰なん?

全然分からんのやけど。』

 

『え~?【ぶるうたす】知らんと?』

 

私が出会った芸能人は

筋肉漫談で一時期有名だった

【ぶるうたす】だ。

同期のヤツは名前を聞いても

知らん、そんなヤツ。

とそっけない。

 

次の日は会社で色々な人に

自慢したが誰も【ぶるうたす】を

知らなかった。

 

サインしてもらったTシャツは

悩んだ挙句、結局、捨てた。

 

ごめんね【ぶるうたす】。

 

キンニクデパートヘヨウコソ

 

合掌

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