276発目 周囲を気にする話。


空港モノレール

羽田空港へ向かうモノレールは

浜松町を出てから5分ほどが経過していた。

 

空港快速が出来てからというもの

東京出張が楽になった。

以前の各駅停車のみの時と

比較すると車内の込み具合も

全然違う。

 

ゆったりと空いた車内は

全員がいずれかのシートに

座っていた。

 

私が座ったシートの斜め前に

親子3人連れがいた。

 

父親は携帯電話をいじっている。

母親は横に座る娘を見つめている。

娘は、おそらく未就学児だろう、

今から行くであろう旅行先の

パンフレットを読もうとしている。

 

『ママ、これ何て読むの?』

『エアポート。空港の事よ。』

 

ほほう。想像するに行き先は

英語圏だな。

 

『えあぽうと』

 

娘は懸命に母親の真似をし

発音している。

微笑ましい。

 

『ねえ、ママ。これは?』

 

『ワン、ツー、シックス、エイトよ』

 

『どうゆう意味?』

 

『数字の1と2と6と8よ。』

 

『あ、じゃあみっちゃんの誕生日は?』

 

『みっちゃんの誕生日は6だから』

 

母親は両手の指を娘に向けて

6本だけをピンと立て、

『シックスよ。』

と言った。

 

『セックス』

『ううん、シックスよ』

『セックス』

『違うって、シックス』

『セックス』

 

家族連れの向かい側に座る

サラリーマンは新聞を読みながら

笑いをかみ殺している。

私もかつてこれほどまでに

セックスを連呼する場面に

出会ったことはない。

 

『ねえ、みっちゃん、聞いて

シックスよシ。』

『うん、セックス。』

 

このやり取りが何度か続いた。

母親は娘の声が大きかったので

顔を赤く染めながらたしなめている。

 

やがて何もなかったかのように

娘は母親に最高の質問をした。

 

『ねえ、ママ。

セックスって何?』

 

母親の赤面は最高潮に達していた。

 

オシエテヤロウカ?

 

合掌

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

*