254発目 つかなくて良い嘘の話。


ライナーノーツ

つい、うたた寝をしてしまい

電話が鳴る音で目を覚ます。

 

慌てて電話を取ると

相手は大学の友人だった。

 

『あ、ごめん。寝とった?』

 

電話に出た声が眠そうだったのだろう。

時計を見ると19時半なので

寝ている時間ではない。

気を使ってそう尋ねてくれたのか?

私は思わずこう答える。

『いや、起きてた。』

 

寝てたくせに嘘をつく。

理由は分からない。

気遣ってくれた友人に

対する気遣い返しなのか?

 

『ねえ、おなか空いてない?

何か作ろうか?』

 

料理が好きなのにへたくそな

彼女が私にそう尋ねた。

私は空腹に目を回しそうなのに

『ううん。全然腹へってないよ』

と答える。

 

この子の料理を食べたくないのか、

手を煩わせることに対する

気遣いなのか?

何故か私は嘘をつく。

 

ただ、

 

こうゆう経験は私以外の誰もが

していることなのだということに

大人になって知ることになる。

 

もはや、これは嘘ではなく

軽い誤魔化しというか

”そうありたい”という願望なのだろう。

 

という話を先日取引先の人と

していた。

居酒屋で飲みながらの雑談だった。

同席していた取引先の方は

『ヤマシタさん、それ分かる!

すごく共感するよ。

私もすぐに嘘をつくんだ』

と言ってくれた。

正直、自分だけじゃないという事実に

ほっと胸をなでおろした。

 

話も盛り上がり二次会へと

移動する。

 

中洲の綺麗なお姉ちゃんがいる

バーというかクラブだ。

 

取引先の人の行きつけらしい。

彼の隣に座ったお姉ちゃんが

『よく来られてますよね?』

と親しげに話しかけている。

『そうだね。週に一回は来るよ。』

『ありがとうございます。』

と反吐が出そうなくらいの

ありきたりの会話をしている。

 

そのお姉ちゃんが取引先の

その人にこう尋ねた。

『ご結婚されてるんですか?』

 

彼は堂々とこう答えた。

『独身だよ』

 

私の知っている彼は

既婚者で子供も二人いる。

ああ、これは先ほどの

会話で出た”つかなくても良い嘘”の

ひとつだな、と勝手に納得する。

 

さらに彼は、嘘を重ねる。

 

『独身だし、彼女もいない。

出会いも無い。』

 

その嘘たるや慣れた感じで

まさに堂に入っていると

言っても過言ではない。

 

でもね。

 

それは、その嘘は、

先ほどの話とは少し

ニュアンスが違うんじゃないか?

 

偶然とはすごいもので

嘘をつきまくり、横にいるお姉ちゃんを

モノにしようと奮闘している彼の

携帯に奥さんから電話がかかってきた。

 

ヤバイという顔をする彼。

 

着信メロディーは少年隊の

『君だけに』だった。

 

ウソバッカリヤン

 

合掌

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