239発目 誰だお前という話。~きっかけ2~


ライナーノーツ

ムライが札幌に転勤で来た時に

最初に知り合ったのがオワリだった。

ムライの勤める会社に出入りしている

賃貸不動産の営業で、その日は

ムライの借上社宅の契約に来ていた。

 

応対した事務の女の子が

『そういえばオワリさんて福岡の

ご出身ですよね?

うちにも最近福岡から転勤で来た人が

いるんですよ』

と言ったことが始まりで

ムライはオワリと知り合った。

 

聞くとムライより2つ年上のオワリは

同じ小学校の先輩後輩だった。

オワリは小3の途中で転向したらしい。

でも同じ地元ということで

すぐに意気投合し二人は仲良くなった。

 

年が近いせいもあり

プライベートでも一緒に過ごす

時間が増えた二人は

お互い独身ということもあって

合コンにはよく二人で参加していた。

抜け駆けはなしですよ。

一緒に彼女を見つけましょう。

と、高校生みたいな誓いも立てていた。

 

ムライにあの美女を引き合わせたあと

オワリはほんのちょっと嫉妬していた。

『あんな美人が彼女なら幸せだよな。

俺より先にムライさんが結婚するのかな?』

 

性格の良いオワリは友人の幸福を

心から祝福する気でいた。

 

その日の夜、ムライから

連絡があり、仕事が終わったら

会うことにした。

きっと、今日の昼間の報告だな。

待ち合わせ場所には既に

ムライは来ていた。

遅れたことの詫びを言いながら

オワリはムライの正面に腰かけ

ながら聞いた。

『で、どうでした?

あの美女とは?うまく行ったんすか?』

 

ムライはちょっと困った表情を浮かべ

こう答えた。

『実はね、オワリさん。

彼女、私の事を知っていたんですよ。

それで友達からでいいから付き合って

欲しいって言われました。』

『うおおぉお!

まじっスカ?すごいじゃないスカ!

あるんスカ、そんなこと?

奇跡じゃないスカ』

『いや、オワリさん、

スカスカうるさいっすよ。』

 

興奮するオワリとは対照的に

ムライの表情は浮かない。

様子がおかしいことに気づいた

オワリはムライに尋ねた。

 

『何か困ったことでも?』

『実は』

 

ムライは訥々と語り始めた。

 

ツヅクノサ

合掌

 

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