238発目 誰だお前という話。~きっかけ~


ライナーノーツ

目の前に座る女性は

控えめに言っても美人だった。

軽くウェーブのかかった髪の毛は

明るい栗毛色で、化粧も過度でなく

白く細い指はまさに白魚のようだった。

 

うやうやしく持ち上げたティーカップを

そっと口に運ぶしぐさが何とも

言えない雰囲気を出している。

 

周囲にいる誰もが彼女の方を

振り返る。そのあとに正面に座る

男の顔を見て、若干の敵意を見せる。

 

『無理にお時間を作っていただいて

すみませんでした。』

微笑んで会釈する仕草は

そういわれれば男ならだれでも

ゆるしてしまいそうな謝罪だった。

ムライは自分の目の前に置かれた

コーヒーカップには手を付けず

目の前の美女にただただ

戸惑うだけだった。

 

 

話を1時間前に戻そう。

 

ムライヤスタカは自身が勤める

会社を予定より早く出た。

オワリシュウイチから電話があったのは

つい先ほどだ。

 

『ムライさん、お世話になります。

今日ってこれから忙しい?

ランチでも一緒にどうかな?

会わせたい人がいるんだ。』

『ああ、オワリさん、いいですよ。

じゃあ、11:30にいつもの所で。』

 

電話を切るとすぐに事務の女の子が

メモを持ってきた。

ムライが担当するお客様から

折り返し電話が欲しいとの伝言だ。

このお客は話が長い。

ムライはお客に電話するより先に

オワリに電話した。

『ごめん、たった今、客から電話が

入って、この人話が長いんだ。

だから、待ち合わせを30分ずらして

欲しい。』

オワリは快く承諾した。

ムライは客に電話を掛けたが

思いの外、電話は早く終了した。

そのためムライは当初の予定通り

待ち合わせの場所に向かったのだが

店の前まで来て逡巡している。

 

まあ、いいかと店のドアを開け

店内で待ってるはずのオワリを

探す。

窓際の席にオワリを見つけ

近づいた。

 

『あれ?早かったじゃない?

どうしよう先方には30分遅れる

って言っちゃったよ。』

『ごめん、意外と早く終わったんだ。

ちょうどいいや会わせたい人って

誰なの?まったく見当がつかないんだけど』

『私も最近知り合ったんですよ。

話の流れでムライさんの事に

なったときに彼女、あ、今日会わせたい

人って女性なんだけど、彼女が

そのムライさんに会ってみたいわって

なって。』

『何ですかそれ?俺の悪口でも

言ってたんでしょ?』

『いや、居酒屋で隣に座ったんだけど

どうやら我々と地元が同じみたいで

むこうから話しかけて来たんですよ。

そしたらムライさんの話をしたときに

会ってみたいって。』

『え~?じゃもしかしたら

知り合いかもね?

でもさ、俺まだ札幌に来て

福岡出身の人って会ったことないよ。

オワリさんだけだよ。』

 

オワリとムライは昼食の

ランチプレートを注文し

彼女を待つことにした。

 

ツヅクンデス

 

合掌

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