191発目 馬鹿と偶然の話。


ライナーノーツ

人に言えるほど賢くないが
下には下がいるという。

私の周囲にもそんな馬鹿が
少なからずいる。

彼は私の同級生で
中学の時から馬鹿具合では
周囲より頭一つ抜けていた。
というよりも頭がないんじゃないか?
と思えるほどの馬鹿だった。

靴下の右と左が分からないと
言って履くのをためらっていたので
靴下を見せてもらうと
無地だったので右も左も
同じだぞと教えたら
そのあと靴を左右反対に履いたり。

コーラの匂いのする消しゴムを
じっとみてたら食えそうな気がすると
いいながら噛みついたり、また
そんな失敗をしたにもかかわらず
コーヒーの匂いのする消しゴムにも
みかんの匂いのする消しゴムにも
噛みついて、最終的には
匂いのしない消しゴムにも
歯形がついていたり。

押しても引いてもドアが開かない
と騒いでるので、横にしたら
開くぞと教えると、自ら床に
横たわったり。しょうもないボケを
するなと近づくと、彼が
開けようとしていたのは
ドアではなくシャッターだったり。

とにかく、逸話を話すと
彼を知らない人からは
『ウソだろ』
と必ず言われるくらいだ。

そんな彼が私と別の友人が
いるところに来て、こう言った。

『すげえぞ。みんな聞いてくれ。
すごいことに気が付いた!

電車の中を黒崎に向かって
歩くやんか?』

彼が言いたいのはおそらく
進行方向に向かって歩くと
いうことらしい。

『そして外をみるやろ?
そんならさ、俺はゆっくり
電車の中を歩きよるのに
外を走りよる車より
早く歩けよるんよ』

素晴らしい。

彼は世界で二人目の
慣性の法則の発見者だ。

馬鹿が偶然見つけた
素晴らしい発見だった。

ただ、

慣性の法則を知らなかったのは

そこにいた中で彼一人だったのは
内緒にした。

スゴイナオマエ

合掌

 

“191発目 馬鹿と偶然の話。” への4件の返信

ひぃちゃん へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。

*