179発目 占いのババアの話 二日目


ライナーノーツ

夏休みが始まるころ、私たちの街の
商店街に献血ルームが出来上がった。

お金のない私たちは献血をすると
ジュースやお菓子がもらえると聞いて
我先にと献血ルームへ急いだ。
俺が先だ!いや俺だ!と。
まさに血で血を洗う抗争だ。

私は生まれて初めての献血を 経験し、
自分の血液型がB型だということを
知ることになる。
それまでにも例の占い好きの先輩から
お前はB型だろうな、絶対。
って 言われてたから
さほど驚きはなかった。

その献血ルームに飽きが来た頃、
その先輩から献血に行かないかと 誘われた。
これといった用事もない私は
例によって先輩のお供をすることに なった。

先輩が血を抜かれている間、
私は 待合室のソファで雑誌を読んでいた。
雑誌には血液型占いが載っていた。

今日のB型。
思わぬ事態に直面しますが
冷静に行動しましょう。

なんだ、この曖昧な告知は。
注意とも警告とも取れるが
こんなことはB型以外の人間にも
起こりうるじゃないかと、憤りを感じる。

やがて献血を済ませた先輩が
一枚の紙片を手に私の待つ待合室へと 戻ってきた。
なんだか浮かない表情を浮かべている。

どうしました?

ヤマシタ聞いてくれ。
『血液型がB型だった。 驚きで声が出ないよ。』

B型だと分かり途方に暮れる先輩を
横目に見ながら、私も同じB型ですよ。
そんなに悲しまなくても・・・・
と慰めの科白を吐く。

先輩は私に悲しみの理由を 語りだした。

『前に占いに行っただろ?
あのときあのババアは俺に
典型的な A型だと言ったんだ。
そのあとに 特別な存在とも言った』

『あれは占いなんかじゃなく
俺が最初にあのアンケートに
A型と書いたからだ!』

謎は解けたぞ。

つまりあのババアは占い師なんかじゃなく
アンケートをもとにあたりさわりのない
答えや警告をちりばめ、
俺たちをだます 悪い奴だ。

ええ、私はあの時点でそうだと
感じてましたよ。とは言えない。
じゃあ、どうします?

こらしめてやれと私と先輩は
占いのババアのところへ向かう。

ババアは以前と同じブースに座っていた。

一部始終を説明し、この前の代金を 返せと迫る。
先輩の気迫にもたじろぐことなく
一枚上手の占いのババアはこう言い放った。

『あなたは特別な星の下に生まれてるの。
だから、自分のことをA型だと思い込んでしまうわ。
でもあなたはB型だった。
これはちっとも 悪いことじゃないの。
むしろ本当の血液型が 分かって喜ぶべきなのよ。』

いや、その舌先三寸のやり取りには
私も感心するしかなかった。

まんまと言いくるめられた先輩は
すごすごと引き下がり肩を落として 帰宅した。

数日後、まるで引き潮のように
街から胡散臭い占い師は消え、
先輩の家には週に数十枚の単位で
わけのわからないDMが届くようになった。

個人情報の管理はしっかりと
するべきだと いう教訓のお話だ。

ウラナイハシンジナイ

合掌

“179発目 占いのババアの話 二日目” への1件の返信

  1. ギャハハハ(笑)(笑)(笑)
    やっぱり、占い師なんぞ占いなんぞ
    余計に信用しなくなっちゃった。(笑)

    だけど、私は宇宙人は居ると信じてる(笑)
    あれ?矛盾してるかしら?(笑)

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