175発目 名前の由来の話。


ライナーノーツ

小学生といえども、親や大人が
見てなければ結構な無茶をする。

私たちが小学生のときもそうだった。

誰が言い出したか忘れたが
電信柱に誰が一番高くまで
登れるかを競うことになった。

私の一つ年下の彼は
上級生に先んじようとし
一番手は俺が行くと息巻いた。

おお、よっしゃ、行け行け。

あおられる彼はこの一件の後
ピッカというあだ名がつけられるとは
この時点では予想だにしてない。

勢い良く電柱によじ登った彼は
ほぼ電線の真下までよじ登ったとき
片手を離してガッツポーズを決めた。

電柱はどぶ川沿いに立っており
ピッカが登って行ったところまでは
地上からだと約3メートル、
川底までは5メートルはあっただろう。

その川底に落ちた。

焦った我々は川底でぐったりしている彼を
助けようと擁壁を慎重に降りて行った。

声をかけるが動かない。
大丈夫か?死んどるか?

良く見ると頭がパックリ割れて
血が出ている。

隣で直樹という子が笑い出した。

おい、お前こんな状況で笑うなよ
と私が怒ると直樹がピッカの横顔を
指差してこう言った。

『鼻の穴にタニシが入っとる』

見るとぐったりとしたピッカの鼻の穴に
もぞもぞ動くタニシがぴったりと
収まっていた。

川の上の方で大人たちが
『大丈夫かぁ?』と声をかけてきた。

ヤバイな。怒られるな。
でもタニシを鼻の穴に入れて
頭から血を流すピッカをみると
どうしても笑いが止まらない。

大人たちが下りてきてピッカを助けると
救急車を呼んで病院に連れて行った。

後日、無事に退院してきた彼に
僕らは『タニシ』というあだ名を用意していたのに
手術の跡の頭を見ると
見事な三日月ハゲがあったため
急遽ピッカというあだ名になった。
そのためあのときの3人以外は
タニシのことを知らないまま
この歳になった。

あいつどうしてるかな

タニシ

合掌

“175発目 名前の由来の話。” への1件の返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

*