118発目 集中力の話。


青果店北京駅前

仕事に取り組むときの
集中力はその仕事の仕上げに
差が出ると思う。

何かをやりながら何かをやると
そのどちらも不完全に終わるケースが
多い。というのが私の経験則だ。

大学時代の友人で八百屋を
経営している者がいる。
両親を亡くしたあと、おばあちゃんが
経営していた八百屋を継いだ。
一流のゼネコンに就職が決まって
バリバリの現場監督として活躍していた
26歳ごろに退職し、八百屋の道を
選んだ彼は、学生時代から
ものすごい集中力の持ち主だった。

先日、ふとその八百屋を訪ねた。
元気に威勢の良い声を出し
すっかり八百屋の親父に
なっていた。
近づく私に気づいた彼は
よお、と片手を上げて歓迎する。

どおだ調子は?と問う私に
笑顔で答えてくれた。
『今日は大根と巨峰のいいのが
入ったぞ』と。

小さく一口サイズに切って
皿に盛ってくれたが、大根が
梨に見えてしょうがない。

『大根はこのまま食べるのか?』
『甘いから食ってみなって』

私はそのどちらもおいしく頂いた。

昔話をしながら彼はダンボールの切れ端に
太字のマジックで何かを書こうとする。
いわゆるポップだ。
『さあて、いくらにするかな?』

彼がダンボールに書いたポップには
こう書いてあった。

”巨根 1パック 560円”

私は年老いて集中力の欠けた彼と
ダンボールのポップを見比べ
また来るからな、と言い残しその場を去った。

さあ、彼はその間違いに気づいただろうか。

ウレタカナ

合掌

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