698発目 命の次に大事なモノの話。


同じような出来事が
2回続くと
「たまたま」

3回続くと
「偶然」

4回続くと
「奇跡」

5回目だと
「もうウソやろ!」

 

 

高校の頃、
付き合ってた彼女が
泣いていた。

「どしたん?」

と聞くと

「髪を切りすぎたの」

と答えた。

 

可愛い。きゅん!

 

ってなったのを今でも

時々思い出す。

 

「すぐに伸びるよ」

 

そんな慰めの言葉も通じない。

 

「女の子にとって髪は、ね」

ぐすんぐすんと涙を流しながら

「命の次に大事なの」

 

親兄弟よりもかい!

 

「うん、分るよ。元気出せよ。

似合ってるよ、短いのも」

 

そんな慰めの言葉も
彼女の耳を通り過ぎるだけ。

女の子にとって
髪を切りすぎるのは
死に値するのね。

彼女の命→髪の毛→
多分オレ→親兄弟

 

週末の横浜駅は
朝からごった返していた。
最初の1回は
地下鉄の駅から
地上に出る階段の
ところだった。

 

正面から歩いてくる
背を丸めたおばあさんは
フレアのロングスカートで
汚いリュックを
肩に担いでおり、
サンダルの音を響かせながら
階段を下りてきた。

角刈りだ!

いや?スカートを
履いたおっさんか?

すれ違いざまに
横顔を覗き込む。
やはり女性だ。
角刈りのおばさんだ。

 

週末の
朝からごった返した
横浜駅は昼食時になっても
ごった返していた。

昼ご飯を食べようと駅の近くの
食堂街へ足を運ぶ。
中国人の店員が
たくさんいる店を選ぶ。

「いらっしゃいまし~」

相席を勧められ、
カウンターに座る。

隣には薄いベージュの
セーターを着たこぎれいな
身なりのおばあさんが。

 

角刈りだ!

 

一日に2回も?流行ってるのか?

 

いや「たまたま」か?

 

角刈りのおばあさんが
最後に残ったたくわんを
口に入れ、レジに向かった。

 

「ありがとうございまし~」

 

昼食を終え、事務所に戻り
出かける支度をし、
駐車場へ向かう。

 

今日の行き先は上大岡方面だ。

 

コーヒーを飲みながら運転し
目的地へ向かう。

弘明寺駅の近く、警察署の前に
小汚い格好のおばさんが
信号待ちをしている。

持っているコーヒーを
落としそうになった。

 

角刈りだ!

 

まただ。

 

「偶然」か?

 

用事を終え、事務所に戻る。

駐車場から事務所のあるビルへ
向かう途中の歩道で
また角刈りの女性と
すれ違った。

 

「奇跡」だ。

 

高校の頃の彼女のあの言葉が
よみがえる。

 

「命の次に大事なの」

 

このおばあさんたちにとって
髪の毛は大事じゃないのか?

 

仕事を終え、地下鉄に乗り込み
帰宅の途へつく。

 

つり革を握る俺の前に
2人のおばさんが座っている。
2人とも肩までの長さの
髪型であることを見て
ほっと一安心する。

聞くとは無しに二人の会話が
耳に入って来た。

「今度息子が結婚するの」

苦い虫が口に入って来た
ような顔で左のおばさんが
言った。

 

「相手の方はどんな方?」

 

「まあ、今どきの子って感じ。
スマホを手放さない子。」

 

「あらま、じゃあ命の次に大事な
息子さんをあげられないわね」

 

「そうよ。嫌んなっちゃう。
代わりに旦那をあげたいくらい」

 

命→息子→なんやかんや→旦那

 

こんな順番か?

髪の毛は?何番目だろ?

 

「でね、先週お相手のお宅に
ご挨拶におじゃましたの」

 

「あら、とんとん拍子ね」

 

「そう。でね、向こうの
お母様だけどさ、うふふ。」

 

「どしたの?」

 

「丸坊主なの!」

 

出た!本日5回目
「もうウソやろ!」だ。

 

「え~?お寺さんとか?」

 

「違うわよ。普通の主婦よ」

 

「普通じゃないわよ!
丸坊主でしょ?」

 

「でね、笑っちゃうのがさ」

 

「うん」

 

「お父様がロン毛なの」

 

「なによそれ~」

 

お父様の場合

命→髪の毛→娘

だろうな。

 

カミハ、ナガイトモダチ

 

合掌

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