本日、3月13日は何の日?
そう問われたら、みんなは一斉にグーグルのアプリケーションや、yahoo! の検索窓に 「今日は何の日?」と入力するのだろう。 そんな手間をかける必要はない。 今日は忘れることのできない日なのだ。 2012年3月13日、このライナーノーツの前身となる「小噺」をfacebookで初投稿した日だ。 ここからヤマシタの作文は始まった。
きっかけは、些細なことだった。 取引先の営業マンから相談を受けたのだ。
「私の営業先は、そのほとんどが初対面の相手なのですが、話題がないのです。共通の話題がなくて、いつも会話が行き詰ってしまいます。 何か良い方法はありませんか?」
私はそこでひらめきみたいなものを感じたんだ。 もしかしたら営業マンの中で同様の悩みを持つ人は意外にもたくさんいるのではなかろうか?と。
だったら、私の得意な蘊蓄と冗談話を公開し、それをみた営業マンが、さも自分の話題のように初対面の相手との会話に利用すればいいではないか!
そもそもライナーノーツはそのような発想で始まったfacebookの投稿だった。
小噺が178発目に達した時、突如原因不明のエラーに見舞われた。エラーメッセージにはこう書いてあった。
「不適切な表現が多く投稿ができません。」
おい!表現の自由はどこへ行った!と憤るも なす術なし、完全に手詰まりだった。 私は友人のイカリング(彼の詳細についてはこちらをクリック)に相談し、小噺での活躍の場をブログに移すことになった。これがライナーノーツのスタートである。
これまで私はたくさんの人々を楽しませようという文章を書いてきた。そのほとんどがポジティブな内容だったと自負している。逆に何度書こうと思ってもネガティブな内容の話は思い浮かばなかった。
ところがこの湊かなえの「告白」は実に読了後に暗澹たる気持ちにさせられる作品だった。
正直に言おう。私は11ページの中頃で読むのをやめたくなったんだ。 だがそれだと余りにも筆者に失礼だし、何より、もしかしたら私こそが読むべき人間なのではなかろうか?とも思えたきたから不思議だ。
物語はそのタイトル通りに、登場人物の独白で構成されている。まず最初は主人公の森口教諭からだ。彼女はとある理由で娘を亡くしてしまった。そしてそれが事故ではなく故意に殺害されたという事実に気がつく。そして彼女は復讐をする。彼女の娘に手をかけた犯人は彼女の復讐を受け、一人は見事に壊れていき、一人は気丈にも難を逃れる。せまりくる恐怖と戦いながらやがて森口教諭の復讐は完了する。
息が出来なくなるほどの悲哀に満ちた登場人物の深層心理とようやく見つかったパズルのピースのような感覚で、最後は身震いさえしてしまった。とても陳腐な言葉だが「稀代のストーリーテラー」ではなかろうか?
驚いたことに、この作品は彼女のデビュー作であり、彼女がこの作品を世に出したのが2008年である。2008年というと私は毎晩のように中洲で飲み歩き、くだらない時間をくだらないおしゃべりで埋め、ダラダラとした怠惰な毎日を繰り返していた。ああ、その時すでに彼女はこの作品の執筆にとりかかっていたのか、と考えると私はなんて無駄な時間を過ごしていたのだろう、と思わずにいられない。
どうか、皆様もぜひ、一度ご賞味あれ。
とは言え、ライナーノーツの作風が変わることはないだろう。私は私の流儀で「なんじゃそれ!」なお話を紡いでいこう。
合掌