仲の良さを認められており
おしどり夫婦という訳ではないが
まあ、それに近いものだと
認識していた。
『隠し事をしないんです。』
若くて綺麗な奥さんが
私の妻に、夫婦円満の秘訣を
聞かれて、そう答えたらしい。
『でもさ、何か隠し事しとる
顔しとるんよねぇ。』
とは、私の妻が受けた印象だ。
夕食のテーブルで妻が
私に話しかけてきた。
『付き合ってる頃から名前で
呼び合っていて、今もなんです~。』
とほざいたらしい。
『ウチだってそうやんねぇ?』
『よそは違うんやない?
子供が生まれたらパパママとか
お父さんお母さんって
呼び合う夫婦の方が
多いやろ?』
『でもさあ、なんか引っかかるんよね。』
こういうときの私の妻は
妙にカンが良い。
『あの奥さん、あやしい。
根拠はないけど。』
『ま、よそのご夫婦やけ
放っておけば。』
その日はそんな感じで
会話を終了した。
数週間後、町内の公民館の
清掃当番が廻ってきた。
私は日曜日で休日であるにも
関わらず、子供たちを連れて
公民館へ向かった。
子供たちが似た様な年頃の
子供を見つけて駆け出していった。
聞くと、例の若夫婦の
子供達らしい。
どれどれ、おしどり夫婦はどこだ?
すると若いお兄ちゃんが
近づいてきた。
『あ、どうもいつもお世話に
なってます。ヤマシタさんですか?』
男前で礼儀正しい青年が
私に挨拶をして来た。
『あ、ヤマシタです。
こちらこそいつもお世話に
なってます。』
ははあ。こいつがおしどり夫か。
おしどり妻はいないのかい?
『ヤマシタさんは今日は
奥さんは?』
若いご主人が聞いてきた。
『いやあ、まだ寝てますよ。
公民館の清掃はいつも
私が来るんですよ。』
『あっはっは。どこも同じですね。
ウチも家内はまだ寝てますよ~。』
『でもすごく仲良しなんでしょ?
ウチの妻がオタクの奥さんに
秘訣を聞いたって言ってましたよ。』
私は少しウソをついた。
実際、私の妻は
『あの夫婦は仮面夫婦だ。』
と疑っている。
若いご主人は、はははと笑い
子供たちの頭をなでた。
しばらくは雑草を抜いたり
表を掃いたりしていた。
すると若いご主人が
近づいてきて私にこう尋ねた。
『ヤマシタさんってご結婚されて
どれくらいですか?』
『ああ、ウチはまだ7年ですよ。』
『どうですか?ご夫婦仲は?』
『まあ、可もなく不可もなく
ってとこですかね?
ウチは隠し事だらけですが
お互いを干渉しないんで。』
『ああ・・・・』
お!どした?
なんか歯切れが悪いじゃないか?
おいお~い。
あるんなら出してくれよ~。
若い夫婦の秘密をよ~。
『あの~。ちょっと変なこと
聞きますけど~。』
『何すか?いいですよ。
どうぞ何でも聞いてください。』
『ヤマシタさんは奥さんの
携帯って見た事あります?』
お~~~!
来た来た~。
『いいえ。見た事ないです。』
『見ないほうがいいですね。』
『どしたんすか?
ま、まさか浮気?』
『あ!違います違います。』
なんだよ~。浮気メールが
どっさり出てきたんじゃないのかよ~。
一般論かよ~。
『違うんですけど・・・・』
『けど?』
しばらく黙った若旦那が
意を決したように告白してきた。
『いや、実はウチ、携帯がオソロなんです。』
『オソロって何ですか?機種?』
『いや、お揃いってことです。』
『ああ、で?』
『で、私、自分のと間違って
妻の携帯を手にして、ほんで
グーグルで調べ物をしようと
したんです。』
『ああ、スマートホンなんですね?』
『ああ、はい。 そんで
グーグルのアプリを開くと
そこに検索履歴が表示されるんです。』
『ああ、そうなんですか。
私は普通の携帯なんで
よく分かりませんが。』
『で、そこにですね。』
『はい。 ああ、つまり
奥さんが検索した履歴が
表示されてたんですね?』
なんだ?なんだ?
君の若奥さんは何を
検索してたんだい?
主婦売春とか?
人妻AVとかかい?
『そうなんです。で
そこに出てきた履歴が・・』
『履歴が?』
『完全犯罪と密室殺人だったんです。』
え~っと。
私には重過ぎるよ~。
持てないよ~、そんな秘密~。
それにしても
ウチの奥さんのカンって
アタルノネ
合掌