419発目 成功への情熱の話。


成功への情熱

稲盛和夫といえば

KDDIの創業者でJALの

再建にもその辣腕をふるった

かなり有名な人だから

知っている人も多いだろう。

 

彼の経営哲学は数々の名言を

残しており、それに触発された

経営者も多いらしい。

 

その中でも私が好きな言葉の

一つは、かつての上司も

よく口にしていたこれだ。

 

『動機善なりか、私心なかりしか。』

 

つまり、何かをやろうとしたときに

その行動自体に大儀はあるのか?

と自問するということだ。

 

自分の名声や欲のために

行っているのではないか、と

自分自身を戒めるように

この言葉を繰り返す。

 

 

ある晩、いつものように

ススキノで飲んでいた。

 

私と同じ常連で詳しくは知らないが

顔と名前は知っているという

人が居る。

 

彼が女性を連れて来店した。

 

私に軽く手を上げて挨拶を

交わす彼は女性をエスコートし

私の隣のテーブルに座った。

 

『久しぶりだね。』

 

『ああ、最近は会わなかったね。』

 

と、気さくな会話を交わす。

彼とは同い年だ。

 

『彼女?』

 

と尋ねる私に彼は

 

『いやあ、タダの知り合い。』

 

と答えた。

 

違うな。

浮気相手だな。

 

彼女のほうも私に笑顔で

 

『リサです。よろしく。』

 

と自己紹介した。

 

私の長年の経験から

自己紹介で苗字ではなく

下の名前を言う女は

80%以上の確率で

ホステスだ。

 

浮気相手だな。

もしくは金づるか。

 

しばらくは雑談をしていた。

 

ふとリサが私に話しかけてきた。

 

『ヤマシタさんはお仕事は

何をされているのですか?』

 

私は二度と会わないであろう

彼女に本当のことを言うつもりはなく

 

『小説家です。』

 

とウソをついた。

 

まあ、冗談と笑い飛ばせば

いいだろうと思っていたが

案に相違して彼女は

両手のこぶしをあごにあて

 

『え~!すご~い!』

 

と私のウソを信じた。

 

『え~!私、小説家の人って

初めて見ました。

どんな作品があるんですか?』

 

こうなるとウソを上塗りするしかない。

 

『ああ、そうだね一番売れたのは

【老人と山】かな。』

 

『え~、どんな内容なんですか?』

 

『山で猟をしている老人が

遭難してから助かるまでの

退屈な話だよ。』

 

それから彼女はすごいすごいの

連発だった。

 

ふと常連の彼を見ると

笑いをかみ殺していた。

 

この女はヘミングウェイを

知らないのか?

 

とうとう我慢できずに

彼が助け舟を出した。

 

『リサちゃん、ヤマシタさんは

不動産屋さんだよ。

さっきからウソばっかり

言ってるんだよ。』

 

彼女は更に驚いて

『ウソつくの上手ですね~』

と感心していた。

 

いや、それ、うれしくないぞ。

 

『リサちゃんさぁ。

実家の土地の有効活用とか

ヤマシタさんに相談したら?』

 

何っ!

 

な、なんだと!

 

おいおい、急に金の臭いが

してきたじゃないか!

 

『あのう、実家というと?』

 

『ああ、リサちゃんの実家は

札幌の大地主で中央区に

たくさん土地を持ってるんですよ。』

 

ごめん、リサちゃん。

いやリサさん、リサ様。

その話詳しく聞かせてください。

 

私は態度を急変させた。

 

彼女は私のそんな態度を

察したのかこう返してきた。

 

『ああ、でも私は実家から

勘当されてるみたいなもの

なんで関係ないんですぅ。』

 

ちっ。

 

何だよ!

 

役立たずじゃねぇか。

 

 

稲盛先生。

ごめんなさい。

 

わたくし。

 

私心だらけです。

 

こうして私の悪い態度が

不動産業界のイメージダウンに

つながっていくのでした。

 

追伸

 

リサちゃんの大きく開いた

胸元に釘付けでした。

 

ドウキアクナリ

 

合掌

 

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