273発目 口ほどにもない女の話。


つかじ

仕事柄、昼食は一人で

食べることが多い。

 

外出先のうどん屋やそば屋、

時にはレストランなど

一日の一番の楽しみが

昼食だと言っても過言ではない。

 

時間があるときは食後に

コーヒーなんかも飲んだりする。

 

コーヒーを一人で飲んでいるときの

時間の過ごし方は主に

読書が多いのだが

こんなブログをやっているので

人間観察もすることがある。

 

その日はイタリアンレストランで

ドリアを食べた後に、コーヒーを

注文した。

 

コーヒーが来るまでの間の

出来事だ。

 

私の後ろに位置するテーブルに

恐らく女性が二人座っている。

 

私は彼女たちに背を向けている

ので容姿は確認できないが

多分、OLさんだろう。

 

『え?どこで知り合ったの?』

 

『高校の時の友達が

バーをオープンしてさ

そのオープニングの時に

来てたの。

友達の前の勤め先の先輩って。』

 

『へえぇ。いくつ?』

 

『32って言ってた。

でも見た目は二十代。』

 

『9コ上かぁ。いいじゃん。

写メないの?』

 

写真付きメールのことを『写メ』って

言ってた筈がいつの間にか

携帯電話で撮影した写真を

『写メ』って言うようになったな。

とぼんやり思いながら

彼女達の会話を背中で

聞いていた。

32の男が9コ上ってことは

彼女達は23歳だな。

 

背の高い店員がコーヒーを

持ってきた。

私はありがとう、と返す。

 

『見た目があやしいね。

結婚してるよコイツ多分。』

 

『え~?やっぱそうかな?

土日とか電話がつながんないのよね。

つきあうのやめとこうかな?』

 

『本人にズバっと聞いてみたら

いいじゃん。怪しかったら

やめときな。』

 

どうやらこのアドバイスを

している女性はもう一人より

恋愛経験が豊富なのだろう。

的確に不安を取り除いている。

 

私のテーブルに店員が

近づいてきた。

先ほどの男性だ。

小さな声で私に

コーヒーのお代わりを促す。

私はカップを差し出し

お代わりを受け入れる。

彼と目が合ったので

親指で後ろを指し

「かわいい?」

と声に出さずに聞いてみた。

 

彼はにこりと微笑んで

そっと首を横に振った。

 

『男なんてさ、直球で問い詰めると

すぐボロが出るんだよ。』

『そっかあ、ありがと。

ところでアミはいい人いないの?』

『いないねぇ。

いない歴6年だわ。』

 

私と彼はズッコケそうになった。

 

お前17歳のとき以来、

彼氏おらんのかい!

そのくせ恋愛アドバイザーかい!

 

私はコーヒーを飲み干すと

席を立ちレジへ向かう。

 

レジへ向かう途中、

そっと彼女達の顔を覗き込んだ。

 

ドランクドラゴンの塚地みたいな

女だった。

 

サ、シゴトシゴト

 

合掌

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

*