236発目 確認したくない話。


ライナーノーツ

『女の子に声かけたことなんて

ないっスよ』

 

若手の社員を連れて飲みに

行った時の事だ。

彼女がいないという男の子に

どうやって知り合うんですか?

と問われ、我々が出した結論が

”ナンパ”だった。

 

博多という街はそこら中に

若い女性がいる。

みんながみんな彼氏が

いるわけではないだろうから

片っ端から声をかけてみろ、と。

 

『コンパをしても会話の糸口が

見つからず、盛り上がりません。』

 

なんてことだ!

 

私なんて見ず知らずの人とでも

盛り上がれるのに。

 

じゃあ、練習だな。と言い

店を後にする。

まずはお姉ちゃんがいる店で

肩慣らしだ。次へ行こう。

 

地下にある店から地上へ

上がってくるとムワっとした

湿気と熱気にうんざりする。

 

先ほどの若手社員が

コンビニに寄りたいというので

店の前で待つことにした。

フリスクを買うんだと。

一丁前に息を気遣うのか。

 

『ヤマシタさん、あれ!』

 

残った社員のうちの一人が

小声で私に話しかけてきた。

彼の言う方角に目をやると

ミニスカートの女性が

ウンコ座りで店の前に

座り込みタバコを吸っている。

 

ほどなく若手社員が帰ってきたので

我々は彼に指示を出した。

 

『とりあえずあの女の子に

声をかけて来い』

 

若手は心底嫌そうに

こう反論した。

『絶対嫌です。

なんて言って声かけるんですか?』

 

『そんなもん、決まっとろうが

そんな座り方したら

パンツが見えますよ。

って言えばよかろうもん』

 

実際、彼女の前を通り過ぎる

人たちは彼女のそのあけっぴろげな

座り方にぎょっとした顔をして

通り過ぎている。

誰も注意はしない。

たまに立ち止まる男性はいるが

そそくさと立ち去る。

 

それもそうだ彼女の容姿は

その・・何と言うか・・・

はっきり言うと・・・

 

朝潮みたいなのだ。

 

あの相撲取りの朝潮だ。

 

朝潮が金髪にしてピンクの

タンクトップに水色の

ミニスカートを履いていると

想像してくれればしっくりくる。

 

それでもこれは度胸試しだ。

行ってこい!!

 

我々は若手を送り出した。

 

彼女前に立ち、意を決したように

ぎゅっと閉じた目を開く。

 

ぎょっとなった表情が

さらに驚きの声も加える。

『えっ!!』

女性が怪訝そうに彼を

見上げる。

『何?』

『いえ、何でもないッス』

 

彼は足早に戻ってきた。

 

『どうした?

パンツ見えますよって

言えよ、早く』

我々は彼を叱咤した。

 

彼は魔物でも見たかのように

肩で息をしながら報告した。

 

 

『ノーパンでした。』

 

え~~~~~~!

 

しかし誰も確認には行きませんでした。

 

メデタシ、メデタシ

 

合掌

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