217発目 懺悔の話。


ライナーノーツ
マッスンとカッチャンは小学校からの

友達でマッスンとは同じバレーボール部に

所属していた。

マッスンの生来の手癖の悪さは

目を見張るものがあり

手に取ったものは無意識に

ポケットに入れるという

悪童だった。

一方、カッチャンはまじめで

嘘のつけない子だった。

 

ある日、カッチャンとマッスンと

3人で近所の大型スーパーに

買い物に行った。

ガンダムのプラモデルが

発売されるというので、購入するためだ。

もちろんマッスンには

『絶対、盗るなよ』

と念を押す。

 

マッスンは嘘をつくときに

癖があり、瞬きが早くなる。

この時のマッスンは瞬きひとつ

しなかったので私は安心していた。

 

大型スーパーに入り、目当ての

おもちゃ屋へ走る。

急がないと売り切れるぞ!

おもちゃ屋に到着したら

在庫がうず高く積上げられていた。

ほっと安堵の息を漏らす。

ふと横を見るとマッスンが

紙袋を持っていた。

『どうしたん、それ?』

マッスンは自分でも気づかなかった

というように、あれ?と

首をかしげた。

『いつの間にか持っとった』

そんな訳、無いやろ!

本当に手癖の悪いヤツだ。

私はもう一度念を押す。

『絶対、盗るなよ』

分かったと肯くマッスンは

やはり瞬きをしていない。

一抹の不安を感じたが

とりあえず目当てのプラモデルを

無事に購入し、スーパーを

後にする。

 

店を出たところで

カッチャンが私に話しかけてきた。

『サトルごめん。盗った。』

なに!そっちかい!

『カッチャン、一緒に謝ってやるけ

返しに行こう』

そういうやり取りをしていたら

背広を着た大人が店から出てきた。

 

ヤバイな、捕まるな、こりゃ。

 

その大人は一目散に

マッスンの方へやって来て

『その紙袋の中を見せてごらん』

と言った。

 

ああ、違うんです。

今日はこっちのカッチャンが

犯人なんです。

と、のどまででかかった

言葉が出ない。

 

『ほら、これ君、会計してないよね』

え?

見るとマッスンの紙袋は

パンパンに膨れ上がっていた。

いつの間に・・・・

マッスンは手を振り切ろうと

抵抗する。

『ちょっと、おいちゃん

離してよ!歯医者の予約の

時間やけん!』

 

なんて言い訳だ。私は

のけぞりそうになった。

ふと見るとマッスンは

高速で瞬きをしていた。

 

結局、引きずられるように

連れて行かれたマッスンを

見送り、私とカッチャンは

何もなかったかのように

帰路に着いた。

しかし、カッチャンはうなだれていた。

『俺のせいでマッスンが・・・』

いや、君も悪いけどあの男は

もっと悪いよ。と慰める。

家に帰る途中で教会を見つけた。

カッチャンはここで懺悔していくよ、

と神妙な面持ちで私に語る。

じゃあ、つきあうか。

でも懺悔なんて初めてだな。

本当にマッスンには悪いことをした。

と、カッチャンは尚も神妙な面持ちだ。

ふとカッチャンの顔を見ると

高速で瞬きをしていた。

 

オマエモカイ

合掌

 

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